武士道 (岩波文庫 青118-1)

制作 : 矢内原忠雄訳 
  • 岩波書店 (1938年10月15日発売)
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本棚登録 : 3618
感想 : 319
3

(01)
奇妙さがあり面白い。それは不気味さといってもよいかもしれない。
キリスト教と近世以前に由来する日本の武士を無理にでもくっつけてみるとこうなるよ、という接合面に著者の際立つ個が示されている。つまり、著者が説明する武士の徳性からすれば本書を著す必然性はないし、著者が信ずるキリスト教からすれば、敢えて武士を理解する必要もない。
が、著者はそれを本書で見事に継ぎ合わせた。その手際の妙には明らかに近代精神(*02)が現れている。洋の東西を問わず武士道や騎士道がよって立つ中世のメンタリティや、キリスト教の古い部分だけでは、このアクロバティックは成り立たなかった。本書が国際的に読まれたとすれば、そのへんの妙な事情のエキゾチックもあってのことだろうと思う。

(02)
第14章は「婦人の教育および地位」である。著者の苦肉の章ともいえる。章立てとページ数をながめたとき、この章に最も多くの頁が割かれていることは看過すべきではないだろう。女子論でもあり、現代的なフェニミズムにおいて本書はどのような位置付けがなされるのか、興味ぶかいところではある。
また、本の構成という点では、巻末の人名索引が楽しい。キリスト、孔子、シェイクスピアへの言及はもちろん多いが、従来からの指摘があるように、社会進化論のスペンサーや近代神秘主義ともとれるエマソンからの強い影響が見られることを確認しておきたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: modern
感想投稿日 : 2019年5月2日
読了日 : 2019年5月2日
本棚登録日 : 2019年4月26日

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