ホットロード 2 (集英社文庫(コミック版))

著者 :
  • 集英社 (1995年8月18日発売)
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本棚登録 : 325
感想 : 31
4

(01)
彼女ら彼らが出現する場所がまず注目される.ロードというテーマでもあるので,それは圧倒的に路上である.単車に乗っていてもいなくても路上である.もちろん学校内,住居内,店舗内,病院内という場面が混じりはするものの,路上に勝るものではない.路上であるからこその交通と友好(*02)が結ばれている.
路上であるが,昼間は言うまでもなく太陽にホットに照らされていることが多いが,夜間も照らされている.この夜間の光,テールランプ,ヘッドライトは作風を印象づけているが,そのほかの街の様々な光に照らされていて,主人公たちの眼(*03)はおそらく闇に安らぐことがない.余白の大きさや白さが,露出オーバーやフラッシュを思わせる,光の過剰を際立てている.
それら光たちの勝利は,そのまま,本書のテーマでもある戦後の日本人の家族と生活のパラドキシカルなありようを指示している.

(02)
路上にたむろしているその姿は,いわゆる集会に代表されるが,立位もあるがときに座位も見られる.いわゆるヤンキー座りも前面的ではないが描かれている.おそらく80年代の湘南あたりではまだ,路上が汚れていたせいか,それとも立位の労働等に慣らされていたせいか,10代の彼女ら彼らも路面レベルにそのまま腰を落として座るということはない.または,次の出走などの運動に備えているのかもしれない.座っても堤防の上であるとか,路面からのわずかな立ちあがりに腰を掛けている様が80年代の都市風俗として記録されている.

(03)
瞳の中の妙な光,それはモノローグによって「夜景」と解説されることもあるが,この瞳の描き込みも人物造形や風景描写を大きく担っているが,一方で,指の描き方も心に残る.注視していると,手や指のデッサン集のようにも見えてくる.この描き込みの意味は,本書のテーマでもある生活に関わるものだという予感がある.

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: comic
感想投稿日 : 2018年2月3日
読了日 : 2018年2月3日
本棚登録日 : 2018年1月20日

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