自ら真犯人を突き止め、冤罪事件に関われば再審にまで漕ぎつける、規格外のジャーナリストである著者が本著で扱うのは、俗に言う南京大虐殺こと、南京事件。
どんどんと地雷原に突っ込んでいくかのようで、何と言うか崇敬に似た感情を抱いてしまいます。
本著を読んで思ったのは、思いのほか自分の感情が高ぶらないこと。同じ著者の「桶川ストーカー殺人事件―遺言」や「殺人犯はそこにいる」では、ページをめくる手が止まらず、興奮しながら読んだのですが、本著ではどうにもそういう気持ちになれませんでした。
それはつまり、自分が日本人だからなのでしょうか。遥か昔のことでも、自分に都合が悪いことは認めたくない気持ちになったり、認めていても触れたくない気持ちになるものなのでしょうか。
本著をキッカケに、そんなことを考えさせられました。これを自覚してからこそ、本当にフェアになれるのでしょうか。
また、内容について、70年前の出来事を扱っているからこそ、入手できる情報量に限界があり、結局火種になっている「30万人」という虐殺の人数を明らかにすることも難しく、上記の2冊のようなカタルシスは無いです。(TV放送では触れられていたのでしょうか)
本著の後半は旅順事件と著者のルーツへと向かいますが、個人的にはもっと南京を掘り下げて欲しかったなぁとも思いました。
とは言え、相変わらずの調査量。丁寧なお仕事ぶりは見習いたい限りです。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
歴史
- 感想投稿日 : 2018年9月4日
- 読了日 : 2018年9月4日
- 本棚登録日 : 2018年9月4日
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