チョンキンマンション。社会人になりたての20代の頃、なんとなく1泊したことがあって、怪しげな空気にビビりつつも素晴らしいネイザンロードの眺めと水回りの微妙さを堪能した記憶があります。
路地にたむろするアフリカ系の人々もその空気づくりに一役買っていたわけですが、本著はまさにそのタンザニア人たちのアングラなコミュニティを題材にした、人類学者による「エッセイ」です。
端的に感想を述べると、フィールドワークの読み物として面白いのですが、第6章や最終章の著者の考察を読んでいると、今後更にグローバルに広がっていくと思われる資本主義の評価経済の仕組みに対する「別の対抗軸」が浮かび上がってくるように感じられる、考えさせられる一冊でした。
フィールドワークの部分は、良くここまで調べたなぁ…と思う対象群への密着ぶりで、ボスの現地妻的な扱いを受けて(しかもそれを本に書いて)しまうレベルの仕事熱心さはこちらが心配になるくらい。
第4章に載っているインフォーマルな香港-タンザニア間の送金システムは、法的にどうなんじゃと思いつつも非常に無駄の無い仕組みで、面白いと感じました。
著者の考察の部分は、まだ氷山の一角だけを示されたような感覚で、今後広く展開していく余地があるものなのかわかりませんが、評価経済と言われた時に一般的に感じる「信頼できない相手を排除する仕組み」ではない、ゆるーく、負担にならない繋がり方、その中で動いている互助の仕組みというのは、学ぶべき要素があるように感じました。
こっちの方をもっと読みたいなー、と思ったら、著者が新書で「『その日暮らし』の人類学 もう一つの資本主義経済」を出版されてるんですね。読んでみようかな…。
- 感想投稿日 : 2020年7月5日
- 読了日 : 2020年7月5日
- 本棚登録日 : 2020年7月5日
みんなの感想をみる