誰も教えてくれない人を動かす文章術 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2010年12月17日発売)
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文章を書く目的は、自分を表現する、と言うのでは曖昧すぎる。
「私は、ものの見方を変える文章こそが、意味のある文章だと思っています」p.20
それがどんなシチュエーションにおける文章であっても、新しい視点を与えるものでなければ価値は得られない。

……新しさとは何か。どうすればそれを得られるか。
「独自の視点の見つけ方は二通りあります。『異質であると思われる二つのものの間にある共通点を見つけること』と、『同質であると思われる二つのものの間に差異を見つけること』です」p.56
「個性というのは、ある種の『無理』や『歪み』であると私は思います」p.59
多少強引でも、既存のつながりを引き離し、全く違う形でつなげる作業が「独自性」をはぐくむ訓練になる。

逆に言えば、あらゆる個人的なセンスが新たな発見を促すこともある。
「これからの時代の情報の価値は、一人ひとりの体感とか手触りとか、微妙な感覚のところをどれだけすくいあげられるか、というところにかかってきます」p.83
常にいろんな人の「独自な」感覚に対しアンテナを張っておく。それが気付きの力になる。

読書感想文の課題図書になるような本を、解説で紹介されているような一般的な読み方で済ませてはならない。なぜならそれらは「テキスト」だからだ。
「多義的な解釈を許すものほど、テキスト性の高い質の良い作品なのです」p.105
評価を恐れず自由に読み、自由に書く。これは僕も日頃から気をつけていること。

(ちなみに)好きな表現。
「例えば有名な存在を太陽のように利用し、あなた自身は月のように光ればいい。つまり引用するのです」p.119

基本のスタイル。フォーマット。
「まずゴールとなる一文を決め、次にスタートとなるタイトルを疑問文の形で示す。そうして通過駅ともいうべきポイントを三つくらい並べる」p.178
これに慣れたら、一つの文章の中で異なる意見を戦わせ、より合理的な結論を自ら導く弁証法的論理展開に挑戦してみる。それは柔軟さを鍛え、自分の主張を肉付けするきっかけにもなる。自分の観点を固定することはいかなる場合でも罪である。

「文章においては、凡庸さは恥です」p.184
つねに「普通」を超えていく。

ここでいう文章力とはソーシャルメディアに蔓延するあらゆる文章に対しても言えることだと思う。ブログとか、twitterとか、まあこういうレビューとかもそうだけど。
自分がその文章を書くことで、読んだ人の視点を変えたり、心を動かしてやるっていう目的意識。誰にもまねできない自分だけの切り口から表現してやろうっていう野心。
twitterでも、たくさんRTされるつぶやきにはそういう力があると思う。

少なくともこの本は改めてそれに気づかせてくれた。良書。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年5月21日
読了日 : 2011年5月21日
本棚登録日 : 2011年5月21日

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