愛するということ

  • 紀伊國屋書店 (2020年8月28日発売)
4.08
  • (373)
  • (281)
  • (184)
  • (45)
  • (10)
本棚登録 : 9941
感想 : 391
5

去年、『嫌われる勇気』『幸せになる勇気』を読んだ時、中で言及されていて気になっていた本。
ちょうどその年に新訳が出ていて、しかも装丁は鈴木成一デザイン室が手掛けておりめちゃ美しい!となれば、読まないわけにはいきません〜。

冒頭の、「生きることが技術であるのと同じく、愛は技術である」という一節が、この本を象徴していると思います。
そうですよね、誰かと一緒に生きていくにしても、1人で生きていくにしても、日常を機嫌よく送っていくことってある種の技術な気がする。
(あ、一定の経済力や生活環境が担保されているのは前提の上で、ですよ。)

そうした中で、心に残ったのが、終盤に出てくる次の言葉。

「安全と安定こそが人生の第一条件だという人は、信念をもてない。防御システムをつくりあげ、そのなかに閉じこもり、他人と距離をおき、自分の所有物にしがみつくことで安全をはかろうとする人は、自分で自分を囚人にしてしまうようなものだ。愛されるには、 そして愛するには、勇気が必要だ。ある価値を、これがいちばん大事なものだと判断し、思い切ってジャンプし、その価値にすべてを賭ける勇気である。
この勇気は、虚勢を張ることで有名だったムッソリーニが「危険をおかして生きよ」というスローガンで訴えたような勇気とはまったくちがう。」

今年、2021年は夏にオリンピックが予定されていて、それは「安全安心な大会」になるそうだけど。
この状況で開催に突き進むことは、果たして信念を持った勇気なのか、虚勢を張った勇気なのか、はたまたそのどちらでもなく運転手のいない機関車が走り続けているのか、思わず考え込んでしまった1冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年6月18日
読了日 : 2021年6月18日
本棚登録日 : 2021年5月12日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする