カラマーゾフの兄弟 5 エピローグ別巻 (5) (光文社古典新訳文庫)

  • 光文社 (2007年7月12日発売)
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感想 : 206
5

日本列島が最強寒波におおわれている頃、この凍てついたロシアの地で繰り広げられる物語もまた、クライマックスへーー。
昨秋から4か月におよんだ読書の旅も、ついに完結。
いやあ、それにしても長かった。
まずはおつかれ、私!!

3巻から徐々にスピードアップしていた展開は、4巻でさらに凄みをまして、5巻のエピローグまで一気読みでした。
ミーチャ、有罪になってしまったのか、うわあ……。
そしてイワンはこれからどうやって生きていくんだろうか。

それにしても話が長くて読むのが辛くて、途中で何度も投げ出しそうになったけれど、なんとか最後までたどりついたいま、この作品と出会えて本当に良かったと思っています。
なんとなく、最近は自分の経験のなかで、小説ってこういうものだ、というイメージをもっていたのですが、それを根底からくつがえすような構成と世界観。
はじまりがあって、事件がおこって、結末をむかえて、という流れに加えて、登場人物が話すごとに、頭の中に万華鏡のような球体が形づくられて、切り取り方や光の当て方でいくらでもキラキラと見え方が変わる。
人の心の、とらえどころのなさや危うさが、あますところなく表現されている。

運命のあやで無実の罪人になってしまったミーチャに、アリョーシャがかける、
「兄さんは苦しみを受けることで、もうひとり別の人間を自分のなかに甦らせようとしたんです。ぼくに言わせれば、一生どこへ逃げようとも、そのもうひとり別の人間のことをつねに忘れずにいるだけでいいんです……それだけで兄さんは十分なんですから。」
という言葉が好き。
苦難に巻き込まれた人の、怒りや絶望を絶ち切って、人生の主導権を自分自身に取り戻す意味が込められていると思う。

5巻は、約半分が訳者の亀山郁夫による解題でしめられているけれど、本編を読み終わってから読むと、これがまためちゃくちゃ面白い。
今回は途中で挫折することをさけるために、とにかく先へ進むことを優先して読んだけど、再読の際はもっとディテールに着目して読めたらいいなあ。

細部の描写で個人的に印象に残ったのは、最後の裁判でカテリーナやラキーチンの、風俗を生業にするグルーシェニカに対する差別心がむき出しになる場面。
ドストエフスキーの冷静な観察力に驚いてしまった。

それにしても、この重量の作品を読み通すには、2020年代に生きる身としては、学生時代に読むか、社会人の場合は生活上の何かの優先順位を下げて時間をつくらないと、かなりむずかしいと感じる。
私は学生時代(はるか昔)にカラマーゾフを読まなかったので、たまたまとはいえ、人生の中でこの作品に向き合う時間を与えられたのは幸運だったと思う。
めぐり合わせに感謝しよう。

そして同じく最後までたどり着かれた皆さまも、おつかれさまでした!!
さようなら、カラマーゾフの兄弟たち、また会える日まで。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年2月4日
読了日 : 2023年2月1日
本棚登録日 : 2023年2月1日

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