着眼と考え方 現代文解釈の基礎〔新訂版〕 (ちくま学芸文庫)

  • 筑摩書房 (2021年10月11日発売)
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1963 年に刊行された現代文参考書の復刻版。
文学的な文章を扱うパートと、論理的な文章を扱うパートの2部構成で、それぞれ解説と、主に昭和初期から中期の文章を題材にした例題や問題演習から構成されています。

復刻版だから当たり前とはいえ、はじめは「これが現代文と言われても、ちょっと古すぎるなあ」ととまどいつつ読み始めたのですが……。
思いのほか、解説文が平易かつ明快で、古さを感じず、文章の読み方についても深く掘り下げられており、とても良かった。
そして解説文と合わせて読むうちに、題材文の視点の面白さや主張の魅力にもひきこまれました。

「意図」「文体」「価値づけ」「世界観」などなど、漠然とわかったようなつもりでいるけれど、いざ説明しようとすると言葉が出てこない抽象的な概念について、簡潔に、でも言葉を尽くして丁寧に、説明されています。

「……論理的な文章を読む場合、書か
れた文章の内容を構成に即して理解するだけでなく、その内容構成を論者の立てた構想として把握し、論の奥にある論者の根本的な思想まで理解する必要があろうかと思います。
右のような論者の根本的な考え方を理解するのに便利な方法、などと言うものはおそらくないでしょう。もし必要な注意があるとすれば、それは、論者によって考えられたことの内容を理解することがすべてだとは考えない心構え、論の内容は論者のものであること
を忘れない心構え、だと言ってもよいでしょう。」

文章を読む、それは平面の文字の羅列を目で追うことだけれども、同時に、著者の世界観のもとで構成が練られ、書かれるべき内容が吟味された過程にさかのぼって想像力を働かせていくことで、その行為が、他者への共感や思いやりにつながるのかなと思います。

それにしても、私、その昔の受験戦争の名残なのか、仕事で制限時間から逆算して文章を読むことを長年続けてきたせいか、問題を解くときに、焦って早とちりしたり、自分の思い込みで解釈を間違えていることが多いな……反省(苦笑)。
もっと冷静に、落ち着いて、文章と向き合おう。
題材の1つだった三木清さんの文章がとても良かったのと、長田弘さんの文章に登場するオトフリート・プロイスラーの『クラバート』が面白そうだったので、また手にとってみようと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年8月3日
読了日 : 2023年8月3日
本棚登録日 : 2023年2月9日

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