四方を海に囲まれた日本は、豊富な漁業資源に恵まれていることを何となく誇りに思っていたが、食卓に並ぶサカナが密漁、しかも暴力団がらみだということを本書で知り、かなりショックを受けた。
三陸のアワビ、北海道のナマコとカニ、築地市場の裏側、銚子市、ウナギの国際密輸など、著者は体を張って、漁場や密漁のアブナイ取引場所に潜入し、いかに日本の漁業と卸システムが、密漁品とそれを裏で牛耳る暴力団に支配されてきたかを暴いていく。
考えてみると、海の男の荒っぽさと暴力団は確かに似通っているし、漁不漁の運も博打のような世界で、相通じるものがある。何といっても、監視の目さえかいくぐればタダで漁を獲って大金が手に入るのだから、裏社会のあぶない連中が群がる条件は整っている。密漁による被害総額は相当なものに上がるらしいが、密漁品と正規品は流通の中で巧妙に混ぜられ、知らぬ間に消費者が買っていく構造になっているらしい。
発電所の海は漁業権を放棄しているため法律の盲点をついた穴場になっていたり、密漁特攻船の改造の仕方、北方領土のサカナをめぐってロシアの政情や根室の人びとの思惑が大きく揺れ動いたりと、今まで知らなかった漁業の裏側を知ることができた。これから魚を買ったり食べたりする時に、ふと考えてしまうだろう。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2019年11月25日
- 読了日 : 2019年11月16日
- 本棚登録日 : 2019年11月25日
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