初めて読んだ宮本輝の青春小説。
大阪に住む椎名燎平は大学の入学手続きの場で、佐野夏子という女性と運命的な出会いをし、一目惚れする。同じ新入生の金子に無理やりテニス部に入部させられた燎平は、夏子や金子、テニス部の仲間たちと大学生活を開始する。
無気力ではないものの、自分が進む道が見つからない若者が悶々としながら、周囲に流されるままにスポーツや恋愛、出会いと別れを経験していく。
住む世界がもとから違うと半ば諦めながらも燎平は夏子への思いを裁ち切れず、かといって押していく勇気もなく、友だち以上恋人未満の関係に甘んじている。
価値観が現代とだいぶ違っているのと、見る人から見たら燎平は立派なリア充なのだが、”青春時代”というものがイメージほどキラキラしておらず、不器用きわまりない時期であるのは今も昔も同じで、劣等感にこりかたまった燎平や仲間たちの言動にもどかしくも共感できたりする。
燎平たちが二回生になり、テニス部の祐子が結婚してアメリカに行くことが決まり、仲間内のバランス関係がわずかに変化したところで上巻は終わり。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文学・評論
- 感想投稿日 : 2023年8月31日
- 読了日 : 2023年8月25日
- 本棚登録日 : 2023年8月31日
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