本書は、北部仏印から南部仏印、そして真珠湾攻撃に至る裏側での日・米・英それぞれの意思決定過程をなぞりながら、重要とされてきた暗号解読情報がどのような役割を果たしたか、あるいは果たさなかったのかを検討している。
新書ではあるが完全な初心者向けの本ではない。仮に「情報戦」というタイトルに惹かれて本書を手に取ったとしたら、その議論の前提となる日米英の詳細な動向に関する記述についていけなくなってしまうかも。「日米開戦と情報戦」なので、大まかな歴史の流れに加え、特に日本の主たるプレーヤーを理解して初めて味が出てくる本なのではないか。
日米戦争に向けては、大多数が、日本に至っては殆ど誰もが戦争を避けたいと希望していたことに悲劇が見える。
「戦争への道は、想定外の連鎖でもあった。」(No.3618)と筆者が記しているが、外交ルートを使い、暗号を解読し、当時の最新の手段を尽くしても "fog of (pre-)war" は払拭できなかった。今も相手の意図を理解し、自分の側の動きに対する相手方の反応を想定することがどれほど正確にできるか。このような研究を頼りに、当時の道筋を振り返ることで、今後の国際政治における国家間の悲劇的な誤謬が少しでも回避されることを期待したい。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2021年1月9日
- 読了日 : 2021年1月10日
- 本棚登録日 : 2021年1月9日
みんなの感想をみる