失楽園(上) (角川文庫 わ 1-35)

  • KADOKAWA (2004年1月24日発売)
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感想 : 28
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 いわゆる伏線なのだと思いますが、序盤からやたら二人が死にたがる、というか死を意識したがることに違和感を感じました。

面白かった点としては
・途中から出てくる阿部定事件の調書の内容が、本編よりも興味深く感じました。あまりいいことではないし、私はそういうタイプではないから、実践はしませんが。阿部定さんの気持ちはわかる気がします。たぶん石田吉蔵さんとやらは、それほど阿部定さんのことを好きではなかったのではないかと感じました。でも本編の二人が死にたがる気持ちは正直最後まで理解できませんでした。

・二人の逢い引きの舞台がちょいちょい変わっていて、読者を飽きさせないとともに、お互い同士飽きないようにしているんではないかと感じました。本文にもありますが、「飽き」問題は重要ですよね。しかし、「飽き」を越えたところに、また別の「愛」の世界があると私は考えています。

・主人公の久木さんというかたが、失礼ながらとても五十代で結婚したお嬢さんも一人いるようには思えない。存在の耐えられない軽さ。でも、ヒロインの凛子さんにはその軽さが慕わしかったという設定になっている。単なる好みの問題かもしれないけど……。逆に、久木さんがもう少し重みと責任感のある男性だったら、この話はどうなったのだろうかと思います。

・久木さんが、奥様にいざ離婚を切り出されると、離婚を嫌がる所がなんとも。まあこのへんは男性でないとわからない部分なのかもしれません。離婚への心理的障壁が低くなっている現代の若い方たちには、この話は理解しづらくなっているのではないでしょうか。

 この話、当時は社会現象になったとか聞いております。なにか男性読者の心をつかむものがあるのだろうと思うのですが。それが何かはちょっとわからなかったです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年1月15日
読了日 : 2021年1月15日
本棚登録日 : 2021年1月12日

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