シモネッタのデカメロン イタリア的恋愛のススメ

著者 :
  • 文藝春秋 (2005年8月3日発売)
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感想 : 18
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米原万里さんの「打ちのめされるようなすごい本」から飛んできました。イタリア語通訳の田丸公美子さんは、仕事の打ち合わせにびっくするくらいセクシーな格好で登場し「カップはD級ですが、通訳はA級です♡」なんて、華麗に挨拶をするような大人物だそうで、もう注文して以来、到着を心待ちにしておりました。本書は「好き者」イタリア人たちの、男女の愛にまつわる逸話をまとめたエッセイ集。田丸さんの「ユーモア+下ネタ」のセンスは一級品!シモネッタの大人の色気の恩恵に、私もあずかれるでしょうか。

そんな艶やかなお噂の絶えない田丸さん。「デカメロン」と聞いた善良な読者がつい田丸さんの自慢の胸元を想像してしまうのも、きっと彼女の計算どおり。語源はイタリア詩人ボッカッチョの物語集。舞台は14世紀のフィレンツェ。蔓延中のペストから逃れ郊外の家に避難した男女十人が、退屈しのぎに毎日一人一話を語り十日間を過ごすという設定。総計百の物語が収録されています。その多くは恋愛話や失恋譚ということで、千夜一夜物語のロマンチックバージョンとでも申しましょうか。

もうひとつ文学に関連して著者ご紹介の弓削達氏いわく。ローマ時代に大人気を博した「アルス・アマトーリア」は「性の快楽の追求が、単に肉体の技術としてだけでなく、男女すべての能力、知性、教養を総動員しての全生活の努力として奨められている」偉大なる古典だそうで、そのDNAを脈々と受けつぐ現代イタリア人たちは、愛と笑いのエネルギーに満ちあふれ、いつでも直球勝負。「セクハラしないことがセクハラ!」とまで言わしめた国民性には、日本からは、かの悪名高い光源氏か好色一代男の世之介くらいにしか太刀打ちできそうにありませんw

田丸さんのテンポよく巧みな日本語に、さすが同時通訳!と何度も舌を巻きました。巷では子供をバイリンガル、トライリンガルに育てようと、たくさんの親御さんが奔走しておられます。子供たちが皆、ペラペラと外国語を繰り始めれば、やはり将来的に通訳の需要は低くなるのだろうかと嘆きつつ、それでも母国語の達人でないと務まらない通訳の仕事に、子供の頃から大切にしてきた憧れの気持ちがやるかたなく溢れてくる今日この頃です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2012年9月18日
読了日 : 2012年9月16日
本棚登録日 : 2012年9月16日

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