『この娘どこか変だ』
この不気味な表情に添えられた,まんまのコメント。
子供がやらかすホラー映画は好きじゃないのだけれど、一度目にしたら最後、手に取るまでは帰さないよ…無言の圧力に押されて、レンタルしてきた1本。
三人目の子供を流産し、失意の底の沈む夫婦の元へとエスターは孤児院よりやってきた。
話し上手で処世術に長けていそうな9才の少女は、多少風変わりな所もあるが、絵がうまく、人を引きつける不思議な魅力が存分にある。
そんなエスターに両親の関心を奪われた長男の不満。
聴力障害があるものの、姉が出来たと素直に喜び、心を許していく愛らしい長女。
そして、どこか不自然を感じる父親に対しての態度。
平穏だった家族の日常は徐々に乱されていく。
何か、おかしい。
この娘、何を考えているのだろう?
そして少しずつ露見されていく本性に気がつき始める母親。
が、
かつてアルコール依存症であった彼女の話をまともに聞くものはいない。
愛らしい9つの子供は邪悪な心などもつはずはない。
誰も、
誰も、
すぐそこにいる悪魔の存在には気がつかない。
皆、目で見る事しか信用しないからだ。
家族、と言う心の絆も
目の前にある事実の前では脆いものだ。
実際、ストーリーが進むにつれ、
この仲良し家族に過去何度も訪れた愚かしい出来事も
明らかにされて行き、物語には更に深みが増していく。
オーメンの様な心霊系の悪魔ではない。
(だが、その非情な行為はオーメン並みの残虐さ)
一体、彼女は何が目的なのだろう?
そして、9さい(?)の子供がここまで犠牲を払ってでも得たかったものとは何だったのだ?
エスターを引き取る前に交わされた夫婦の会話が心に残る。
「子供はもう、二人もいるのだし…
無理をしなくていいんだよ。」と言う夫に
妻は
「違うのよ。流産して赤ちゃんに注ぐ事ができなくなった愛情を、エスターにすべてあげたいのよ。」
え…
おかしいでしょ。
溢れる愛には限りがない。
どんどん注げばいいじゃないか。
二人の子供に、今以上の愛を。
行き場のない愛などは存在しないのだ。
見知らぬ子供を引き取って、今は亡き子供の分の愛を注ぎたい、という願いは、
ただの喪失感、寂寥感、その穴埋めをしたかっただけに過ぎない。
愛とは寂しさを埋める為の感情ではない、と思うのだが…
実はエスターが、恐ろしい殺人鬼となってしまった理由も、その辺りにあるような気がする。
愛とは与える場合のみ、愛であり、
強く求めるもの、欲しいと願う心とは…
果たして、本当に愛と呼べるのだろうか?
- 感想投稿日 : 2011年11月26日
- 読了日 : 2011年11月26日
- 本棚登録日 : 2011年11月26日
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