かつて日本の精神医療および学会において論争があり、抗争があった。それは反精神医学と呼ばれるような「過激な」思想や、精神科医療の現場における悲惨な環境改善を求める問題提起だった。これらについてまとめた本、だと話はわかりやすいのだが、立岩真也の文章はそのような簡単なものにはならない。
読み通したところでよく分からないところが多く(書いた本人もよく分かっていない模様)、体系立った知識が得られたとは言い難いが、一方でこの人が一体どのような思考法をして、また何故このような不可思議な文体を採用してるのかについては少し分かった。
極めて回りくどい表現を使う意図は「物事を整理した上で、断定する」という行為を周到に避けているから。様々な要素を捨象することで厳密にデータ化したり、世の物事をスパッと切り取る概念を生み出す代わりに、様々な夾雑物に塗れた世界の中で可能な限り誠実に物を書こうとした結果とも言える。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
福祉、精神
- 感想投稿日 : 2022年8月27日
- 読了日 : 2022年8月27日
- 本棚登録日 : 2022年8月27日
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