多分ストーリー展開だけが記されていれば、文庫本500頁を超えるものにはならないだろうが、宮尾登美子の文章には、主人公の目に映る自然風景、お菓子、四季の移り変わり、寒さ、風、太陽の昇り沈み、花や草木、衣服、気温、湿気、お菓子、果物、何とはない子供の遊びに使われる小道具などなどの説明表現が非常に多い。男の読者としては、もっと話を進めてくれよと思ってしまうところもあるし、その分ちょっととっつきにくい感じは否めない。ただ同時に、その様な表現を通し事によって、実は直接表現では言い表せない登場人物の内面の思いを読者に伝えている。
時代背景が違うとはいえ、現在の自分には考えられないような男の身勝手さがいやになってくる。
とは言いながら、本当にそうであろうか?自分は違うと本当に言い切れるだろうか?
結局自分も岩伍と同様に、金回りに不自由がない事がイコール家族を思いやっているという意識になってしまってはいないだろうか?喜和もお金を第一の目的として望んでいたわけではない。
うちのカミさんも喜和と同じく、必ずしも思ってることをストレートに表現出来る方ではないし、底抜けに明るいとか、多少のことは笑い飛ばしてしまうという性格でもない。どちらかと言うと、後になってから「ああすればよかった」、「こうすればよかった」と思う方だろう。その様な不安、不満を抱えているであろう彼女の思いをどこまで汲んで、不安なく包容してあげる事が出来るだろうか…男としての真の甲斐性が問われる。
最後の別れの場面は、非常にあっさりとした状況描写であるがゆえに、その分余計に突き上げてくるものがあった。
- 感想投稿日 : 2015年12月27日
- 読了日 : 2015年12月27日
- 本棚登録日 : 2015年12月27日
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