スタープレイヤー (単行本)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年8月30日発売)
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本棚登録 : 966
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買い物帰りに路上のくじ引きで一等賞を当て、異世界に飛ばされた34歳・無職の女性、斉藤夕月。
『スタープレイヤー』という10の願いを叶える力を授かるが、元いた世界に戻るという願いだけは100日経たなければ叶わないという。
夕月は仕方なく『スタープレイヤー』として異世界での生活を始めるが
ある日、マキオと名乗るスタープレイヤーの男が訪ねてきて、国家民族間の思惑や争いに否応なく巻き込まれていく…。
ファンタジスト恒川光太郎が描く異世界ファンタジーの新シリーズ第一弾。


いやぁ~面白い!
先が気になって気になって
僕にしては珍しく二日で一気読みするほどハマってしまった(笑)

異世界に迷いこんで帰れなくなる夢を幼い頃から頻繁に見てきたせいで
物語の前半はコワゴワ読んでたけど、
湿り気のあるいつもの作風とは違い
どこかカラッとした空気感に
まさにTVゲームをするように物語世界にのめり込んでいた。

この物語の何が面白いって、
「10個の願いを叶えてくれる能力を持って
RPGの世界に突如放り込まれたら
人間はどう生き、何を考えるのか?」という
ある意味ゲーマーたちの妄想や願望をしっかりとした世界観で構築し描いてみせたこと。

冒険好きや異世界ものが好きな人にはたまらない小説だろう。

しかしいくら設定が素晴らしくても
新しい世界や国や法律を一から築き上げていくには
かなりの筆力と物語る力がいる。
それを軽々とやってのけ、
読者に夢を見せ続ける恒川光太郎の凄さよ。

さりげなく異世界へと誘い込み
読む者を物語へと旅立たせる、
選び抜かれた精妙な言葉と比類なき想像力。

紙面から吹き上がる風さえ感じる、
幻想的なのにリアリティのある異世界描写。

異世界に紛れ込むとという「恐怖」を描きながら
何度となくハマりたくなる甘い誘惑は
デビューからひたすら異世界や幻想小説を描いてきた恒川光太郎だからこその職人技と言える。


それにしても、もし、10個の願いが叶うとしたら、
僕なら何を願うだろう。

まずは住まいの確保。
野球ができるほどの庭と菜園、
プールも欲しい。
ミニシアターのような映画鑑賞部屋と
防音構造の音楽鑑賞部屋に
一通りのビンテージ楽器が揃った音楽スタジオ。
あとはトレーニングルームとBar付きの書斎かな~(笑)

とまぁ、読めば間違いなく
誰もがバカな妄想に浸れること請け合い(笑)
(しかもこの10個の願いは、スターボードという「人には見えないキーボード」に文章で打って審査が通れば叶えてくれるのだけれど、一つの文章でいくつもの願いが叶う点が実にうまくできてる。つまり、「庭付き、家具付き、プール付き、犬付き、カップヌードル一年分付きの一戸建てが欲しい」と書けばこれで一つの願いとみなしてくれるのだ。上手く書けば、一つの願いで街全体を作り出すことも可能なのである)


物語の前半は主人公の女性、夕月(ゆづき)も
家を建て、誰もが考えるような個人的な欲望を叶えていく。
しかし、この国に自分と同じ能力を持つスタープレイヤーの男性、マキオと出会ったことから
物語は大きく動き出し、
夕月は国家民族間の争いに巻き込まれていく。

スタープレイヤーの存在を妬む者、その力を奪おうとする者との熾烈な争いの中、
夕月の出した結論とは…

2015年夏に第二弾が出るとのことなので続きが楽しみだし、
稀代の物語作家、恒川光太郎のライフワークとなりそうなシリーズなので
この機会に沢山の人に読まれ物語の力を感じて欲しいし、
ファンタジーや幻想世界、RPGのゲームが好きなら
間違いなく楽しめる小説だと思う。


★角川書店が制作した
『スタープレイヤー あらすじ動画』↓
https://www.youtube.com/watch?v=KQC9Gt5Akts&feature=youtube_gdata_player

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2015年9月22日
読了日 : 2015年9月22日
本棚登録日 : 2015年9月22日

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