映画篇 (集英社文庫)

著者 :
  • 集英社 (2010年6月25日発売)
4.18
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感想 : 184
5

これから何度
この小説を読み返すだろう。


区民会館で無料上映された
「ローマの休日」を軸として、
5編の短編に出てくる
登場人物たちが
お互いを知らぬまま、
すれ違い交錯する
タランティーノ的構成の妙。


選ばれた映画たちがまた
どちらかと言えば渋めなチョイスで
そこがまた
映画好きの心をくすぐるのです。



個人的に印象に残ったのは、
友を物語の力で助けようとする様が
どうにも切なく
自分自身が親友を亡くした体験ともダブってくる
「太陽がいっぱい」と、


驚愕な結末が
エモーショナルに胸を打つ
「ペイルライダー」と


映画「サマーウォーズ」は
この物語を参考にしたんじゃないかと勝手に睨んでる(笑)
ラストの
「愛の泉」の三作品は
読後かなり余韻が残りました(>_<)




この小説が描いているもの。

それは

『物語は果たして
誰かを救うことができるのか?』

というテーマだけど、

結論から言えば
救うことができると
自分は強く信じています。



しょせん漫画や小説や映画は
つくり話でしょって
ピントのずれたことを言う人がいるけど、

フィクションであろうが
現実のことであろうが
そんなものは関係ないのです。


それを読んで
(または観て)

どれほど心が動いたかによって
人間は作られている。


円軌道の外という
一人の人間を作っているのは、

友達に聞いた沢山の物語であり、

ドキドキをくれた小説であり、

感動した漫画であり、

たわいない嘘の話であり、

胸躍らせた
思春期に見た映画です。


言葉や物語が持つ力。

傷つけるためではなく、
だれかを守り、
だれかに伝え、
だれかと繋がりあうための力を
自分は信じているし、

金城さんの作品は
それを感じさせてくれる
素晴らしい物語だと思います。


読んだ人すべてに
必ずやポジティブな科学反応が起こるのは間違いない作品だし、

読後は
必ず映画を観に行きたくなりますよ(^_^)v

強く強く
オススメしたい小説です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年11月29日
読了日 : 2012年11月29日
本棚登録日 : 2012年11月29日

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コメント 2件

MOTOさんのコメント
2012/12/01

命を得て、この世に誕生する奇跡は素晴しいけれど、
さて、そこに言葉が無ければ、
物語が無ければ、なんと寂しい一生なんだろう…。

なんて事を思ってしまいました。
意志の疎通が出来る。
思いを伝え合う。

ただ、生きる為の情報を得るばかりではなく、
この、扱いがたい『心』。
…を、最もご機嫌な状態で維持して置く事が出来る方法やら秘訣やらはきっとそこにあるはずだと思っているから、
私も映画、大好きです!(本も♪)

金城さんの映画論もすっごく興味ありますねぇ♪

円軌道の外さんのコメント
2012/12/04


MOTOさん、
ありがとうございます!


てか、めちゃくちゃ
いい言葉
震えましたよ(>_<)


映画はいいですよね♪

たった2時間で
いろんなことが学べて、
自分の世界を広げてくれるものなんて
なかなかないし。


自分は薄汚れた路地裏に
ひっそりと佇んでるような
昭和の香りがプンプンする映画館が好きなんです(笑)


高校時代は
授業サボって
屋上でギター弾いてるか、
バイク飛ばして
海に行くか、
映画館で3本立て観て
クラブまでの空き時間をつぶすのが
日課になってました(笑)(^_^;)


今はネットの普及によって
映画も個人で楽しむ方向に変わってきてるし、

同じものを共有して
会話を楽しむ術を
知らない人が増えてきてるのは
本当に寂しいことだと思います(>_<)

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