猫絵十兵衛御伽草紙 十二巻 (ねこぱんちコミックス(カバー付き通常版コミックス))

著者 :
  • 少年画報社 (2015年2月16日発売)
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感想 : 6
5

猫好きには嬉しいことに、今の日本は空前の猫ブームですよね。ゲームも映画も小説もCMもいつの間にやら猫だらけ。
漫画界でも動物漫画と一括りにするのではなく、
「猫漫画」というジャンルが成立するほどの高い需要があります。
そんな数ある猫漫画の中でも可愛さだけではなく、ストーリー性、ほっこり度、泣ける度、猫の描き分けの上手さ共に群を抜いて高評価したいのがこの作品です。


時は江戸時代。沢山の猫たちが人間とともに暮らす「猫丁長屋」に暮らし、
襖や紙にネズミ除けに効く猫の絵を描く猫専門の絵描き屋を営む若者、十兵衛。

人間の言葉を話しキセルや酒をたしなむ、タヌキみたいにデカい猫股のニタ。

猫好きで有名だった稀代の浮世絵師・歌川国芳(うたがわ・くによし)をモデルにした十兵衛の絵の師匠・吉野十玄(よしの・じゅうげん)。

気は優しくて剣の腕も一流だが、猫が大の苦手なイケメン若侍、西浦弥三郎。

大の女好きで、売れっ子戯作者の濃野初風。

個性豊かで人情深い主要キャラたちと共に、
毎回出てくる様々な猫たちの願いや思いを、十兵衛とニタの名(迷)コンビが不思議な力で、時に助け、時に励まし、猫たちの後押しをして事件や問題を解決していきます。

記憶に残るいい話を挙げると、
失明寸前の飼い主のために毎日お宮さんに願掛けに行き、ついには自分の目を捧げようとする猫の手白(てしろ)。
花魁を慕い護ってきた三毛猫の三多郎の壮絶な最期。
黒猫のクロが取り持つ江戸時代版ロミオとジュリエットの身分違いの恋。
女彫刻師が彫った欄間から抜け出し、月を追いかける不思議な白猫。
シジミを売って家計を支える孝行少年松吉を助けた、神社に奉られた猫石の恩返し(泣けます!)。
寺の和尚(おしょう)と縹(はなだ)色の目を持つ長毛猫との切っても切れない絆。
捨てられていた子犬を育てるうちに母性愛に目覚める魚捕り名人の猫、耳丸(コレも泣けます!)。
夜逃げした主人の帰りを健気に待ち続ける猫、お珠(おたま)。
三味線にされた母親をはるばる追いかけてきた傷だらけの子猫。
新美南吉の「手ぶくろを買いに」を思わす、酒好きの年寄り猫と孤独なご隠居さんの絆(これまた泣けます!)
江戸時代に実在した、湯で洗い狼の毛皮で濡れた猫を包む、猫専門蚤(のみ)取り屋の話。
などなど、よくぞまぁこれだけいろんな猫を描き分け、猫に関する民話を集め、現代にも通ずる深いええ話を連載してきたなぁ~ってビックリします。

詳細な江戸時代の文化や風俗、四季折々の行事や風習、当時の庶民の食べ物や生活描写など、
毎回江戸時代の匂いまでも伝わってくるような描写も楽しいし、
あにゃ、んな~、ぶなぁん、うにゅ~んなど(笑)、バリエーション豊かな猫たちの鳴き声の面白さや
猫好きなら分かるリアルな猫たちの生態も過不足なく描かれていて、
ホンマよくできた猫漫画だなと毎回感心しきりだし。

猫好きを自認する方でまだ未読な人、動物好きな人、江戸時代の文化や風習に興味のある人にオススメだし、
先日も生きたままの子猫を生き埋めにした教師の事件が発覚したばかりだし、
個人的には命の大切さを教える意味でも是非とも学校教材に加えていただきたい猫漫画なのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 漫画
感想投稿日 : 2015年4月5日
読了日 : 2015年4月5日
本棚登録日 : 2015年4月5日

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