ユニヴァーサル野球協会 (白水Uブックス)

  • 白水社 (2014年1月18日発売)
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感想 : 12
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恐ろしい一冊。想像力も際限がなくなると、現実の境界線がどこにあるのか分からなくなる。
『ユニバーサル野球協会』とは、ヘンリー自身が考案した野球ゲームの架空のリーグ。サイコロ(これは「ダイス」と訳して欲しかった)をころがして、その出た目によって試合の次の展開を決めてゆく。このリーグには8チームが所属し、各チームは年間84試合を戦う。
架空の世界のゲームなのだが、選手は言うまでもなく、監督やコミッショナーまで人格と個性を持ち、読んでいるそばから、何がヘンリーの頭の中の話なのか、何が現実の世界での出来事なのか、もう分からなくなる。そして、ある試合の中で万にひとつのある出来事が起きてから、この空想(いや敢えて言えば、妄想)と現実の境界がますます曖昧になる。頭のなかで非常ベルが鳴っているようなのだが、それすらもどちらの世界で鳴っているのか分からない。
本書が書かれた1968年には、もちろん「バーチャルリアリティ」なんていう言葉は存在しなかったはずだ。しかし、ここで描かれているのはまさに「バーチャルリアリティ」だ。これを自分で正しく支配しないと、ヘンリーのように妄想が爆走する。そんなことをこの時代に警告していたのだとすると、その洞察力もある意味恐ろしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 本・雑誌
感想投稿日 : 2018年11月18日
読了日 : 2014年6月6日
本棚登録日 : 2018年11月18日

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