「箱の中」に続く木原作品の講談社文庫版です。木原ファンの方々同様に思い入れが深く、何度も読み返している作品です。
何度読んでも、痛くて甘くて胸に迫るものがあります。
一般向けと腐向けでは、ここがボーダーラインなんだなということを今回はっきり認識しました。
「箱の中」でも、その先が描かれている続編は収録されていなくて惜しいなと思っていたのですが、今回も同様の扱いで納得しました。
BLを敬遠する読者が、「文学」として容認できるのはあくまでも美しいことの上下までなんですね…
確かに、センセもひとまずここで物語を完結させているので、編集上の意図だけではないようにも感じます。
それでも、「愛しいこと」さらには「愛すること」が収録されていないのは、ファンとして大変もの足りない気がします。
「愛しいこと」は、BL色が本編以上に強く、読者願望もそれに応えているセンセのサービス精神も顕著だけど、なによりストーリー展開としてここは絶対外せない!と思うものがあるんです。
私はそこでボロ泣きしてしまったんですけど…
まだまだ松岡は数々の試練を乗り越えなければならなくて、この後の展開はもっと胸を打つものがあるので残念です。
「愛しいこと」は、何度読み返しても感動してしまうのですが、小説の常識から言えばハードルが高すぎるんでしょうか?
二人がハッピーエンドになるかならないかというところが、BL的には大問題でも、一般的には男同士の恋愛ストーリーにどこまで感情移入できるかというところのほうがまずは第一関門かもしれません。
この機会に、木原作品の面白さに目覚めてくれる読者がさらに増えたらいいなと思っています。
そして、読む人の気持ちをざわつかせて痛くさせるくせに、その先には感動と至福が待っている木原作品のエクスタシーを、ぜひ完全版で味わって欲しいなと思います。
- 感想投稿日 : 2013年3月18日
- 読了日 : 2013年3月18日
- 本棚登録日 : 2013年3月18日
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