恋愛前夜 (キャラ文庫)

著者 :
  • 徳間書店 (2011年11月26日発売)
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本棚登録 : 628
感想 : 57
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せつない幼馴染みもの。「隣の猫背」というのが表題作の前に入っていて、これはトキオとナツメが10歳で出会って隣同士に住むようになってから、高校生になって別れが来るまでの年月が描かれています。
とても詳細に二人の間の出来事が描写されているので、肌感覚でトキオとナツメの気持が理解できます。片親同士で、恵まれた環境とは言い難い子供時代を送ってきた二人だけど、良い事も嫌な事も互いの絆の一部になっていて、その積み重ねがあるからこその愛なんだなと感じさせられます。トキオのナツメに対する気持が単なる恋じゃないのが伝わってくる。なのに、ナツメには友情以上の関係がわからなくて、トキオと離別してはじめて彼の存在の大きさに気がつくのが悲しいです。身近な人への片想いの辛さが半端なく伝わってきます。失ってはじめて分かる大きさです。

この前フリがあるので「恋愛前夜」は、二人重ねた年月の重さがとてもよく理解でき、読むと切なくてたまらなくなります。
もう一度トキオとやり直せると思い勇んで上京したナツメの前に、辛い現実が重なっていくところは痛かった。新しい恋人との仲むつまじさを目の当たりにしたナツメに、思い切り感情移入してしまいました。何よりヤコ先生がステキで憎めなくてナツメには太刀打ちできないくらい良い人だったのが大打撃です。おまけにヤコ先生は情が厚くて、かわいらしさもあって、マンガ家としての実力もあって、恋敵であるナツメに優しかったりするし。
三角関係でも、こういう誰も悪くないというのは結局誰かが最後に辛く悲しい思いをしなくちゃいけないので、後味がちょっとよくなかった…皆を幸せにしてあげたいと思うのは一読者のわがままですが。

二人の想いが通じ合ったのはすごく良かったと思いました。ほっとしました。「死ぬほど好き」な気持を封印し続けたトキオの心の葛藤も伝わってきたし、両想いになれてよかったと感じます。互いをよく知るナツメとならば、平穏で幸せな人生を送れるんじゃないかと言う期待を感じさせます。心残りはヤコ先生。トキオは何もなかったように、以前どおりの師弟関係に戻れるんでしょうか。

イラストが甘くて優しくてぴったりで、口絵もステキでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 凪良ゆう
感想投稿日 : 2011年11月29日
読了日 : 2011年11月29日
本棚登録日 : 2011年11月29日

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