君との願い (二見書房 シャレード文庫)

著者 :
  • 二見書房 (2012年11月26日発売)
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本棚登録 : 53
感想 : 7
4

「夏からはじまる」のスピンオフ。遠野の同級生、律くんのお話です。
時系列としてはあれから1年くらい後で、当時高3だった律も今では大学生。そして、熱烈に片想いしていた穂積と晴れてお付き合いできるまでの仲に至り、彼の店でアルバイトもしています。
律のまっすぐな恋心が、ひとまわりも年上の穂積の心を動かしてしまったわけです。
あんなに軽くてお調子者だった律が、穂積とお付き合いするようになってからは、きちんとした生活を送る努力をしているのに、とても「本気」を感じさせます。

でも、律にしてみれば穂積は、年長者としての責任を感じているからなのか、何回も告白されて仕方なく受け入れているからなのか、自分のような情熱は感じられなくて、まるで保護者のようで。
律は、それでも穂積の言う事に素直に従って、愛想を尽かされないよう少しでも長く彼の側にいたいと願っていたのですが。

痛いほどの温度差が、じわじわと伝わってくる話でした。
その感覚の違いは、一つ一つ大したことじゃありません。事件にもならないような小さなすれ違いばかりなんです。律は、穂積に迫ったのは自分だから、大人の彼の方が正しいと些細な事は我慢して、盲目的に従ってしまいます。
穂積との恋で、とても臆病になってしまった律の気持ちが切ないです。

ところが、元カレの奏也の登場で、律のこれまで抑えてきた感情が爆発してその均衡が破れてしまいます。
穂積の言い分は常識的で、当然なんですよね。でも、大人としての傲慢な部分が知らず知らずに見え隠れしていて、若くてデリケートな律はそこに傷ついてしまうのです。
もやもやとした何かを穂積と奏也の仲から感じていても、はっきりとした証拠もなく責めることはできない焦燥感。律の気持ちが痛いほど伝わってきました。
穂積にとって当たり前の奏也との関係が、律をこれだけ苦しめていることが分からないなんて無神経。
悪気はみじんもないんですよね。
穂積がパーフェクトに見えて実はそうでもないのが、失望させながらも人間味を感じさせてかえって好感でした。

「君との願い2」では、そんな穂積サイドから、彼の心情が描かれています。奏也との今までの関係もここで明かされています。
やるせない恋の顛末ですが、もはや過去の話だということを再確認できます。
合い鍵の件に関しても穂積の気持ちが吐露されていて、胸がきゅんとなりました…

なぜかあちこちで萌えてしまいました。どこが、と説明するのは難しいんですが、今回Hシーンがしっかりあったのは確かですwww
朔と圭一郎も登場して、律の恋路にいっぱい協力しています。相変わらずラブラブで一安心。朔はダメわんこだけど、少し成長しています!

身近な主題を飽きさせず読ませる作家さんです。恋の本質が上手く描かれていて、すごく引き込まれました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ♥BLノベル♥
感想投稿日 : 2013年2月24日
読了日 : 2013年2月23日
本棚登録日 : 2013年2月23日

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