突然愛する人をなくしてしまった波瑠と、なくなった男の息子の椢との10年愛。
ただの惚れた腫れたの話ではありませんでした。深く切ない、魂の再生に涙です。
読み始めは正直、9歳と21歳ってアブナイ!と一瞬引いたんですが。
そういう話じゃなくて安心できました。
でも真面目に、二人の関係って少なくとも9歳の方には恋愛感情がありますから。幼いながらにも一生懸命お父さんと張り合っている椢。いじらしさの中にも男としての矜持がすでに芽生えてるんです。
波瑠がぐらっときて、逃避行しちゃった気持ちがわかります。
でも、あくまでも精神的なプラトニックな絆なんですよね。そこが、ほっとする。そして、苦しいほどどうにもならなくて切ない関係です。
二人にとっての逃避行も、世間にとってはまったく違うものとして奇異な目で見られてしまう、常識の怖さが胸に刺さりました。何にも悪いことなんかしていないのに、うわべだけを見て判断されてしまうのは辛かったですね。
離れ離れになってしまった二人が、その後どんな道を選び、どんな人生を送るのか?すごく興味深くて、夢中で最後まで読みきってしまいました。
二人の間には、裕也という共有できる記憶があるからこそ、互いを求め合い共に生きようと決意できたのだと思えました。裕也なしでは生きていけないとまで思いつめていた波瑠の魂を救ったのは、一途に波瑠を追い求めてきた椢の執着ですね。
椢もまた、波瑠という愛する存在があったから物事に前向きに取り組めている感じがします。
絡みは最後にあっただけですが、萌えました。まったくぐらい経験無しのひとまわり年上の美人、というのは色気がありすぎます。ツボど真ん中でした。
ラストのまとめかたは泣かされた後に、ちょっとベタかなと。でも、引きずるのは良くないので、わかりやすく潔かったです。
小椋ムクセンセは、素晴らしい感性の持ち主ですね。ストーリーの主題を見抜いたイラストで、ぱっと見ただけで切なくなります。表紙なんてテーマそのものですね。
- 感想投稿日 : 2013年9月15日
- 読了日 : 2013年9月15日
- 本棚登録日 : 2013年9月15日
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