主人公は、大学の時から20年間連れ添ったアラフォー同い年の、大学教授×中堅小説家。倦怠期を維持して同居人レベルの関係になってしまった二人です。綾小路き●まろも驚きそうな、馴れ合いすぎて新鮮味を失くした♂×♂cpのリアリティあふれる「熱愛のその後」
よく言えばしっとりした大人の話で、穿った言い方をすれば夢もロマンもないビターな切り口で、表題作のみだったらBLとは言い難いです。男女の夫婦でありがちなことが、男同士のcpで描かれていているんですよね。
でも、興味は湧きます。
特に、男同士という壁を乗り越えて結ばれた二人が、王子様とお姫様のようにめでたしめでたし、末永く幸せに暮らしました、などとおとぎ話のようにはいかないことを知っている読者には、溜飲の下がる思い。シビアだけど。
どんな熱愛カップルでも、夫夫ゲンカもすれば、浮気もして、心が離れてしまう事もありえるのです。事実はそんなもの。
大学教授の洸一と作家の千里も、例にもれずささいなことでケンカになり、家を出たのは攻の洸一でした。憤懣やるかたない洸一はヤケになり、夜の新宿で自分の子供くらいの年齢の健太と知り合います。そして、なりゆきで遠くに行きたいという健太と3日間一緒に、東北を旅する事に。千里と面影が似た健太と、生まれ育った場所に近い地方を旅行することで、洸一は忘れていた愛する人への想いを甦らせるのです。
ケンカしてキレて家を飛び出した洸一が、冷静になって自分を見つめ直す様子が淡々と、丁寧に描かれていて切なくさせられました。色っぽいシーンはなかったけれど、洸一の気持ちが全部頷けるくらい上手く描かれています。
書き下ろしは同じ時間が千里視点で読めます。これがまた面白かった!2004年の投稿作品だった表題作より、垢抜けています。こちらはプラス、知りたかった二人の大学時代の出会いから恋人同士になるまでが、千里の回想という形で知ることができるのがポイント。昔を思い出すことによって、千里の洸一への情熱もまた熱く甦るところがステキでした。セックスレスだった二人のお久しぶりなベッドシーンに照れました。
「未来航路」は、グッと軽いタッチでラブ復活ぶりが上手く描かれていて、湿っぽさを一掃しています。健太のこともきちんとおさめていて拍手。
- 感想投稿日 : 2012年4月27日
- 読了日 : 2012年4月27日
- 本棚登録日 : 2012年4月27日
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