NOISE 下: 組織はなぜ判断を誤るのか?

  • 早川書房 (2021年12月2日発売)
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# 組織的エラーの仕組みと正しさへの道標

## 面白かったところ

- バイアスが強いエラーなのか、ノイズ起因のエラーなのか、この下巻を読むことでより明瞭になった点

- 企業理念やルールや規範が人間社会で長生きしている理由がわかる点

## 微妙だったところ

- 特になし

## 感想

組織により踏み込んだ、エラーとバイアスについての内容。

特に面白かったこととして、アメリカの指紋分析官の話があった。国家随一の専門職である指紋分析官という役職に加えて、指紋鑑定という信頼度の高い(より正解に近い)証拠という組み合わせだからこそ、容疑者の冤罪をなかなか立証できなかったという事実。

これは組織の中で輝かしい存在、例えばエキスパートとかスペシャリストなどの肩書だと身近に映るだろう。

この人たちの決断が必ずしも正解とは限らないし、反芻努力の欠如が無関係の人を悪い意味で巻き込むことになる良い事例だった。

上記の特別な人達も `人間` なので、文字通りヒューマンエラーを起こしうる。

この現実を教訓として我々は意味のあるルールや規範を整える必要があるし、より正解に近づくために時にはノイズをかけて群衆の叡智の力を借りねばならんということなんだろう。

アニメ『PSYCHO-PASS』の世界観と照らし合わせると、どこか自分の中で腑に落ちた。

人間じゃない何かが決断し、裁き、すべてが決められた社会では、ノイズが起きようもないしバイアスのみが存在する。

人間の判断というノイズがないとバイアスの方向転換はできないし、人間社会とは到底言えないものである。

主人公の常守朱が発したセリフの中で、よいものがある

常守「法が人を守るんじゃない、人が法を守るんです」

法を `バイアス` 、人を `ノイズ` と読み替えると、どちらかが悪や正義ではなく共存するものだということがよく理解できた。

読書状況:積読 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2024年1月18日
本棚登録日 : 2023年10月14日

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