モノ書きピアニストはお尻が痛い (文春文庫 あ 52-1)

  • 文藝春秋 (2008年11月7日発売)
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感想 : 17
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現役のピアニストである著者が綴ったエッセイ集。音楽のエッセイはもちろん、フランス文学や食に関するエッセイも多数収録。

青柳いづみこさんは、音楽・文筆ともに名前を聞いており、一体どういう文章を書かれるのか、一度本を読んでみたいと思っていた。

なにしろ、現役のピアニストさんである。そんな人が文章も上手いというのだから、それだけで興味津々ではないですか。
私は、文章の上手い専門家の方がその専門分野のことを楽しく描いてくれる、ということを本当にありがたいことだと思っていて、そういう方にはどんどん本を出してもらいたいと思っている。
だって、その道のことをどれだけ詳しく調べ、そのことについて素晴らしい作品を書いても、それは本当にその道を歩んでいる人の経験とは全く別物だからだ。当然である。もちろん、詳細な調査に基づき、あるいは調査を基に、豊かな想像力で面白く書かれた本も、たくさん、たくさんあるに違いない。しかし、それとは全く別物として、「その道の人」本人の生の声が聞きたいっ、とも思ってしまうのである。

というわけで本書。まさに、現役のピアニストならではのエピソードが多く、非常に楽しませてもらった。
鋭い観察眼と、旺盛な好奇心、そして大胆でストイックな筆遣い。青柳さんの鋭い視線が伝わってくるようなエッセイ集であった。
しかし一方で、門外漢にはフィジカルで読めないエッセイもちらほら。私はクラシックには全くの素人なので、専門的な話をされると途端に面白くなくなってしまう。作曲家の作風や、演奏家のキャラクターなど、それぞれ独自が持ち合わせている性格のようなものを語ってくれるのは、フィジカルでも楽しめて大変面白かったのだけれど、こまごまとした作品や具体例に関しては、「?」状態。作者が薀蓄を言いたいだけなのかしらん? と思ってしまった場面もしばしば・・・。

クラシックを知らない人にとっては、やや読みづらいエッセイだが、青柳さんの観察眼と「書くこと」に対する執着(?)は本物だと思った。
願わくは、クラシック素人も「クラシックを聴いてみようかな」と思うようなエッセイを書いてください。。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 誰かのためじゃない
感想投稿日 : 2011年8月21日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年8月21日

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