読んでからずいぶん経ってしまったけれど……ここに収録されている「土佐源氏」を読んで、『忘れられた日本人』を購入した。
「漁師の娘」徳富蘆花
透き通った文章が美しく、まさに<風>のアンソロジーにふさわしい作品。
きりりと引き締まった風に身も心もあずける哀しさ。私はいったいどこにいるの? 私はいったい誰なの? 答えは風の中、どこへでも、どこかへ行く。
「土佐源氏」宮本常一
読んでいる間に、あまりに情が濃ゆくて、全然悲しい話ではないのにぼろぼろぼろぼろ泣いてしまった。
作中の馬喰は、まさに<風来の人>。根なし草の生活者。どこへでも行ける人、でもどこにも根を張れない人。そんな人だからこそ、人と情が通った瞬間が何物にも代えがたい。
「みなかみ紀行」若山牧水
旅の歌人、若山牧水。牧水の歌はその滔々とした清水のように流れる(酒の歌人でもある!)歌が好きだったものの、その紀行記(随筆)を読むのは初めて。描写される景色がしみじみと美しい。こういう風に歌を詠んでいたのか~、と思いながら楽しんだ。
読書状況:読み終わった
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遠くへ、もっと近くへ
- 感想投稿日 : 2014年9月2日
- 読了日 : 2014年7月19日
- 本棚登録日 : 2014年7月19日
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