古代日本、宇宙、民族と民俗、遺跡、宗教、伝説…そういったものが物凄いエネルギーでごちゃ混ぜにされて、熱くたぎったスープのような状態で提供された感じ。だからまだ、未完成のような印象も受ける。もう少し体裁を整えて、味付けを工夫して、口当たりの良いものにして人前に出せば、もっともっと「いいね!」って言ってくれる人が増えるんじゃないだろうか。でも、ま、そうなってしまったら、たぶん、この原始的で混沌とした渦のようなエネルギーは霧散してしまうのだろうけど。
この作品が、かつてジャンプに連載されていたってこともまた驚きだなぁ。今のジャンプではちょっと考えられないような大人テイストというか、半強制的に頭を使わせられる感じというか…昔の作品を読むと良く感じることだけど(漫画も小説も)、時代が新しくなるに従って、いわゆる「コドモ」の期間が長引くようになってきた気がする。
個人的には、もっと登場人物の背景や内面を描いてドラマ性を高めてほしいとか、エピソードを淡々と繋げるのではなくそこに物語性と浪漫をもっと盛り込んでほしいとか、あげようと思えばいくつかの要望が浮かんできてしまうのだけど、たぶん、良い意味で、そういう小手先にまで気を遣えないような、早く昇華しないと治まりきらないようなパワーが、当時の作者の頭の中にあったのだと思う。
今読んでもハッとさせられるような記述も多いし、後のアニメ文化に引き継がれているようなテーマ(人類の初期状態だとか、今後あるべき人間の理想とか)がズバリと記されていたりもするし、そういう意味では普遍的な魅力がある。そこを更に、縄文に始まる古代日本とからめたところが作者の鬼才たる所以。ところどころに描かれる、縄文土器の文様が妖しさを際立たせる。このへんの興味・関心が、妖怪ハンターシリーズにも繋がっていったのだろう。
物語としては淡白なので心にズドンとくる話ではないのだが、ふとした時に手にとって、何度も読み直したくなる感じ。面白い仮説の史料集を読ませてもらっている感覚に近いだろうか。考古学や民俗学が好きな人なら尚更おすすめ。
- 感想投稿日 : 2015年7月21日
- 読了日 : 2015年7月21日
- 本棚登録日 : 2015年7月21日
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