期間限定の思想 「おじさん」的思考2 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2011年10月25日発売)
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感想 : 37
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告白すると、10年ほど前まで自分は、たとえば「日本は世界に誇れる国になるべきだ」なんてことを考える人間だった。
保守とか革新とかイデオロギーといったものに深く興味を持ったことはないけれど、位置的にはかなり保守で、今もそれはさして変わらないのだけれど、ぐらぐらしたのは内田樹先生の本と出会ったから。
「『日本は世界に誇れる国になるべきだ』なんて偉そうに言うけれど、そもそも国って何かなんて考えたことある?」
内田先生はいつも物事を根本に立ち返って考える。だから容易に結論が出ないのだけれど、その思考の過程、有り体に言えば、「のらりくらり」とした感じが癖になる。
そこから、それまで考えもしなかった結論が顕現する。考えもしなかったことなのに、常識的に考えれば確かにそうだと納得してしまう。「目からウロコが落ちる」とはそういうことをいうのだろうと思う。
「日本は世界に誇れる国になるべきだ」などと軽々に口にすべきではないと反省させられる。
それは自分の頭であらゆる知識を総動員して思考した結果、言っているのですか?―
内田先生はいつもそう問うているような気がして、本を読むたびに粛然と襟を正すことになるのである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2013年1月4日
読了日 : 2013年1月4日
本棚登録日 : 2013年1月4日

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