瑞々しい感性とは、きっとこのこと。
カメラワークの上手な映画を見ているような感覚で読み終えました。
余計な言葉はひとつもなくて、心象風景を表すのにぴったりのフレーズが五七五七七にぎっしり。短いのにすごく濃い。こんな風に言葉をつかえたら気持ちがいいだろうなあ。
切り取る場面もとてもセンスが良くて、日常的なシーンを俵さんの視点を借りて見るような不思議な感覚でした。
私が印象に残ったのは、恋が終わりゆく景色。
心が離れる。切なさ、寂しさ、感傷、ほんの少しすっきりした気持ち。
そこから少しずつ立ち直る。自分の内側にばかり向いていたアンテナが、外側に向き始める。季節の移り変わりや、流行りの服や、友達とのお喋りを楽しめるようになる。
そしてまた新しい人と出会って、恋の予感が始まる。
顔を合わせるのが楽しみで、どんなかっこうをするか悩み、待ち合わせには緊張しつつ早めに行く。
忘れていたな、恋のこの感じ!!と、追体験させてもらいました。
携帯やスマホが登場する前の年代なのもとても素敵に思えました。
手紙を書いたり、家に電話をしたり、待ちぼうけも。
すぐに繋がれないからこそ相手への想いが募る感じが健気で、"万智ちゃん"を応援したくなりました。
自分枯れてるな、と思う人には是非読んでほしいです。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2020年1月29日
- 読了日 : 2020年1月28日
- 本棚登録日 : 2020年1月28日
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