ホワット・イズ・ディス?:むずかしいことをシンプルに言ってみた

  • 早川書房 (2016年11月22日発売)
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コンピューター、オフィスビル、カメラ、石油プラットフォーム、モバイルパソコン、星座、スペースシャトル……。細胞から宇宙に至るまで、世界に存在する難しくて複雑な物体(現象)の断面図や見取り図を描き、それに沿って細かな解説をびっしりと並べたのが本書だ。雰囲気は絵本と図鑑の中間点、という感じだろうか。複雑な断面図をかわいらしいイラストで描き、そのスキマに「これってどういうはたらき?」をわかりやすく書いた説明文が並ぶ。子どものころ目にした「○○図鑑」のとても細かい版、または「大人向けの絵本」といったイメージだ。

本の中身だが、タイトルである「むずかしいことをシンプルに言ってみた」のとおり、洗濯機やカメラ、木や台風など、身近にあるが構造や性質が分かりにくいものをシンプルに解説してくれている…….わけではない。というのも、専門用語や固有名詞をわかりやすい言葉に置き換えようとするあまり、元の単語を想像しにくくなっているものも少なくないからだ。日本を「日の出にちなんだなまえがついた国」と言ったり、心臓を「血液をおすマシン」と言ったり、消しゴムを「間違い消し」、スペースシャトルを「宇宙ボート」と言うなど、なぞなぞや連想ゲームのようになっている部分もある。その事物の一切合切をシンプルに解説するというよりも、個々の部位の名前はいったん脇において、「はたらき」に強くフォーカスを当てて、誰にでもわかるような解説をしている、といえるかもしれない。
ただ、既に分かっているものの説明は複雑になってしまうが、よくわかりにくいものの説明には本書のようなやり方がうってつけだ。例えば鍵穴を「かけらをさし込む穴」と説明されれば何のこっちゃだが、火星探査機の各パーツを「まわりの空気を調べるマシン」「強力レーザーガン」と説明されれば、「へぇ、そんな風になっているのか」と感覚で理解できる。
本書は主に5~10歳向けに作られているが、世界がまだ見知らぬもので溢れている子どもたちにとってはどのページも面白いと思うし、大人たちにとっては、知らないページを辿りつつ知っているページは各部の正式名称を当てるためのなぞなぞとして読めば、それもまた面白いと思う。

わたしのお気に入りは「アメリカの国の法律」のページ。難解で読むのが嫌になる法律(合衆国憲法)であっても、本書のように書いてあればとても簡単だ。平易な言葉に直すとやっぱり基本的なことばかりが書いてあり、むしろ「こんなに細かく色々取り決めてるの?」と思うぐらい補足事項と修正がたっぷりだ。法律はそれが当たり前なのだが、そうしたことを直感的に理解できるのも、やはり子ども向けのシンプルな言葉で書かれているゆえんだと思った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年1月19日
読了日 : 2022年1月19日
本棚登録日 : 2022年1月19日

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