原民喜 死と愛と孤独の肖像 (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2018年7月21日発売)
4.28
  • (29)
  • (20)
  • (10)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 349
感想 : 31
5

原民喜の存在感と遠藤周作の存在感。
自死を選びながらも、残された人や未来に明るい希望を確信し託した原民喜。
原民喜として、その生を全うしたのだと思います。
イエスがイエスの生を生き、十字架にかかったように。

久しぶりに一気読みした一冊。
余計な解釈を加える事なく、最後に

「現在の世相と安易に重ねることもまた慎むべきであろうが、
悲しみを十分に悲しみつくさず、嘆きを置き去りにして前に進むことが、社会にも、個人の精神にも、ある空洞を生んでしまうことに、大きな震災をへて私たちはようやく気づきはじめているように思う。
個人の発する弱く小さな声が、意外なほど遠くまで届くこと、そしてそれこそが文学のもつ力であることを、原の作品と人生を通して教わった気がしている。」

と記し、謝辞をもって締めくくっているが、
非常に静かながらも力強く印象深い評伝であった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年2月20日
読了日 : 2019年2月20日
本棚登録日 : 2019年2月19日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする