宝石の国(2) (アフタヌーンKC)

著者 :
  • 講談社 (2014年1月23日発売)
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感想 : 132
5

1巻がとても素晴らしくて、読了翌日に2巻を購入。
1巻のときから、BGMとして Janis Crunch & haruka nakamura の 12&1SONG を流して読んでいたけれど、収録されている7話から13話のうち、
7~11話まで毎回、無性に悲しくなって泣いてしまった。 悲しくて、寂しくて、やさしくて、はかなくて…

宝石たちの登場人数も増え、1巻以上に前頁カラーで読んでみたいと思う。宝石の特徴を知っていると、その子の背景が読めてもっと面白くなると思うんだけど、普段宝石とは縁がないのでよくわからんw 
アクションシーンは相変わらずなれないけれど、まんが日本昔話でのきり絵的な手法で戦を表現していたのに似ているかもと思った。



「仏教」を手がかりに宝石の国を読む

宝石たちは雌雄の区別がないようで、アドミラビリス族には雌雄があるとされているため、宝石に雌雄が無いのには意味がある。それは鉱物が無機物であることと、インクルージョンされている生物も種の保存に受精を必要としていなかった物であろうこと(本来の宝石のインクルージョンだけでなく、ミトコンドリアをモデルとしたものと推測)が、その主要因だと思う。が、それがもうひとつの意味を持たせることになっていると思う。
「雌雄の性別が無い」というと、仏教の如来や観音も無い。(もっとも天部には弁財天等の性別があるものも)
宝石たちは仏になりうる存在であるという意味が与えられているのではないだろうか。

また、アドミラビリス族の伝説で、にんげんが魂・肉・骨の3つに分かれたとしたのも興味深い。二元論的に精神(魂)と肉体の二つに分かれるとしたくなるところをわざわざ3つにしているのは、肉体を肉と骨に分ける必要があったからではないだろうか。
地上にはにんげんに匹敵する文化をもつ生命は宝石たちしかおらず、伝説によれば骨は宝石たちであるといえる。
そして、骨もまた仏教では大きな意味を持つ。釈迦の遺骨である仏舎利である。骨=宝石という図式を与えることで、ここでも仏教上の聖性を宝石たちに与えていると考えられる。

一方の肉であるアドミラビリス族であるが、その名前に与えられた意味は不明なものの、その生態が貝類であることに注目したい。
ほとんどが海となった星であるが、我々が海の生物と言われてするに思い浮かぶのは魚類であろう。
しかし、海中の描写においては、珊瑚や海綿、あるいはホヤ、シャミセンガイのような生物とクラゲが描かれているのみで、魚類、あるいは海獣のような高度な生命体は現在のところ確認されていない。
貝類は珊瑚やクラゲと比較すると進化した種であり、にんげんの肉であることからも海中にこれ以上の種族はいないであろう。
この海中で最も進化したアドミラビリス族を貝類としたことで、宝石との関連が発生する。
鉱山技術や宝石加工技術云々以前の原始の時代から、美しい貝殻は装飾品として、あるいは貨幣としてにんげんが使用してきたものである。
またさらに価値を高めたもの加工品として、宝石のように美しく輝く螺鈿細工がある。そして螺鈿細工は仏像を安置する厨子の装飾等にも使用されてきた。
貝類を肉としたことで、宝石との共通項を作りだした上、一定の聖性をも付与することとなった。


にんげんとの関係では、金剛先生がどういう存在とされているのかが大変気になる。
名前や効果音等から金剛石か何かの鉱物とは推測されるが、他の宝石たちが知らないにんげんについて何か知っているようであり、宝石たちより明らかに一段高い位置に存在する。
仏教世界では金剛力士像がすぐさま思い浮かぶが、金剛先生=金剛力士ということになると、仏法の守護神という存在となってしまい、宝石たちの指導者という立場にそぐわない。
また金剛力士であれば、二十八部衆の1神になってしまい、宝石たちと同列ともみなされる。
すると、宝石28人に先生が含まれるのか、あるいは月にいってしまった宝石は28人のうちに含まれているのか、というところにも物語のカギが隠されていよう。



6度欠けたこの星は、今のマンガの時代が流星で区切られた「7度目」の世界である。それも仏教に照らしてみると、その果てには、四十九日を迎え閻魔王の裁きを受けて天上世界(すなわち月)に転生するか、
地獄に落ちるのか、はたまた輪廻転生を繰り返すのか……その辺りが物語の落とし所になるのではないだろうか。
(1巻読後に気付いたことは1巻のレビューに載せました)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年4月8日
読了日 : 2014年4月8日
本棚登録日 : 2014年4月8日

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