この世にたやすい仕事はない

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2015年10月1日発売)
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本棚登録 : 1992
感想 : 294
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1話目の途中までは少し読み辛い気もしたが、やっぱり好きだあ、津村さんの作品。

小説なのだが、いつものエッセイにも似ている。
特に、思わず笑ってしまう主人公が心の中で突っ込むセリフなどは、エッセイを書いている時の津村さんと重なる。
いつもの津村さんが、数珠繋ぎのようにネット検索して拾ったネタが、ふんだんにこの作品に活かされているのではないか?と楽しい想像をしてしまう。

3話の中頃に至るまでは、主人公の性を反対に想像して読んでいたので、3話で主人公の性別がわかった時にはちょっとがっかりしたのだが。
私が見落として勝手に感違いをしていたのだろうか?それともそのように誘導されていて3話で種明かしをされたのだろうか?前に戻って読み直さなかったので真相はわからないが、なんとなく仕組まれていたような気がする。
私は騙されていたあるいは感違いしていた方の性別の方が良かった。

とにかく津村さんの作品は「いるよねこういう人」っていう人物がいっぱい出てくる。
それは、悪意なく他人の仕事を乗っ取りに来た老婦人も、それに気付かぬ気の良い社長も含めて。
どの人物も、自分の周りに、すぐに「これはまるで誰々さんだ」と浮かぶような人物がいるわけではないのに、それでも、「わかるわかる!」という感じなのだ。

ところで私はブクログのレビューで、「作者」と言ったり「著者」や「○○氏」と書いたりするのだが、自分なりにはっきりとその使い分けの定義があるわけではない。
しかしながら、気付けば今、津村さんは私にとって津村さんなのだ。
これは失礼なことなのかもしれないけれど、私の中ではもの凄い賛辞としてである。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説・物語 (時代小説はこちら)
感想投稿日 : 2016年3月3日
読了日 : 2016年3月3日
本棚登録日 : 2016年3月3日

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