『芸術と政治』という自分の人生のテーマに、深い洞察を与えてくれる本だった。
なぜ逆にここまで出会ってなかったんだろう。
作者のベンヤミンは、ナチスドイツの時代に生きたドイツ出身ユダヤ人で、フランスに亡命したが、フランスがナチの手に落ちるころスペインに逃げようとしてそこでもナチの手にかかりそうになり、最後には服毒自殺をした。
この時代には写真や映画の技術が栄え、本作『複製芸術時代の芸術』においてベンヤミンは、多岐にわたる考察を披露している。
複製によるアウラの凋落、芸術の礼拝的価値と展示的価値、遊戯。これらのワーディングは、非常にわかりやすい。
そして芸術の検討に普遍的な視座を与えてくれる。
その上で、私はベンヤミンが節々に述べる芸術と政治の問題を深く考えたいと思った。
例えば、ベンヤミンは映画が鑑賞者に対して考える隙を与えないといった話の中では、大衆と映画の関係の近さを示している。
たしかに、単純であればあるほど、刺激的であればある程大衆は影響を受けやすいと思う。現代のフェイクニュースの怖さなどにも通ずるところがあるなと思った。
第二次世界大戦以降最大の安全保障上の危機とも言われる今だからこそ読むべき論考だと思った。先の対戦でどのように映像やメディアが使われていたのかというところも気になる。
私見に偏らず、今後本作でベンヤミンが述べるナチスと映画の関係についてはもう少し精読して理解を深めたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2023年8月2日
- 読了日 : 2023年8月2日
- 本棚登録日 : 2023年8月2日
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