日本その心とかたち (ジブリLibrary)

著者 :
制作 : スタジオジブリ 
  • 徳間書店 (2005年7月22日発売)
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感想 : 7
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 日本文化の特徴は、此岸性・集団主義・部分主義・現在主義・感覚文化という5つに集約されるという。 欣求浄土、厭離穢土を法然が説いたことを例外として、日本は、いまここを重要視する傾向にある。西洋圏では過去・未来・現在という時間の連続性のなかで生きている。これは神の概念が違うからである。死後救われるため、また将来救われるために未来を思う。桂離宮にみられれうように、部分の蓄積が全体をなす。したがって、非対称性の建築物が多い。他方西洋では全体から部分をつくるため対照的である。これは理性の優位というギリシャ哲学の流れのなかで生まれた文化であろう。日本では自然との調和を重んじているのである。まさに柔よく剛を制すの文化でなのである。 ジブリの高畑勲との対談も面白かった。人形浄瑠璃・仮面劇の延長としてのアニメーション・絵巻物とアニメーションの関係についての考察が興味深い。仮面劇は状況劇である。役者そのものの個性を極力排することで、その状況そのものに深く観客が入り込むことができる。また自分自身との同化を可能にするのである。アニメの主人公も多くの場合、状況に巻き込まれることによって主人公が変わるという構造である。これはジャンヌダルクに見られるように、典型的な英雄の構造である。ただの田舎娘が神の啓示によって非凡なものになるのである。潜在的には誰でも英雄たりえるのだ。という共通了解が生まれることになる。これが英雄の物語が多くの人を惹きつける要因のひとつであろう。
 絵巻物とアニメーションについて、絵巻物は多くの場面が非連続的である。いまここで起こっていることを表現している。ある一場面だけを切り取ってそれでも成立しているのだ。すべてを広げて眺めることを絵巻物は想定していない。アニメも同様に、全場面を同時にみることはできない。その場その場のできごとの連続がアニメという形式を成立させているからだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 芸術
感想投稿日 : 2011年2月24日
読了日 : 2011年2月24日
本棚登録日 : 2011年2月21日

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