伊豆の踊子 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2003年5月5日発売)
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本棚登録 : 6473
感想 : 465
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『伊豆の踊子』を読んだ時、ストーリーの詳細が書かれておらず、淡々として正直あまり面白くないと感じた。文体は「〜た」の過去形で、一文も短いため、テンポよく読めるが、あらすじ読むだけで十分じゃん?と思うほどの物足りなさ。ただ作品の解説を読むにつれ、完全に自分の読みが甘かったと反省。

まず時代背景をしっかり把握する必要があった。主人公は旧制高校に通っているエリートで、一方の踊子は芸人という点で身分が低く、社会的ステータスの差がはっきりと描かれていた。

旅の途中の何気ない動作や情景にも深いメッセージが込められている。例えば帽子。当初主人公はエリートの象徴である制帽をかぶっていたが、最後の港での別れの際は鳥打帽(ハンチング帽)になっており、それを渡すシーンも身分の差を克服した決定的なシーン。小説技法の本を読んだので、こういうのは見落としたくなかった、、もっと訓練が必要だと痛感。

文学的な視点や小説技法だけに限らず、このストーリーのテーマも自分にとって何か惹かれるものがある。二十歳の男子学生が孤独に悩み、伊豆へひとり旅する設定は、どこか重なるものがあるのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年5月5日
読了日 : 2021年5月5日
本棚登録日 : 2021年5月5日

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コメント 1件

ともひでさんのコメント
2021/07/19

創作物の凄い所は全てに意味を持たせていること。
セリフの言い回しや情景描写、全てにそうでないといけなかった理由が宿っている。(はず)

これ自分の人生にも適用したいんだよね。
全ての所作、ワードチョイス、選択に自分なりのこだわりを宿したい。
そうやって自己を洗練させていくことによってのみ、究極的な個性に到達できると思う。

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