倒立する塔の殺人 (PHP文芸文庫)

著者 :
  • PHP研究所 (2011年11月17日発売)
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本棚登録 : 841
感想 : 82
5

とても面白かったです。
戦争末期の女学校で、ある少女の死をきっかけに、密かに書かれていた「倒立する塔の殺人」という物語の謎解きが始まる…という要約も難しいお話です。
今回も戦争の残酷さとそれでも損なわれない美に惹き付けられました。
YAの作品なのですが、決して子どもっぽくないどころか、登場する絵画・音楽・小説についても知りたくなる知識欲にかられる作品でした。
「どういう小説が好きか、登場人物の誰に惹かれるか、それを明らかにするのは、自分自身の本質を曝すことでもある」という一文に、それではわたしはここでは自分自身の本質を曝してるのか…と思いました。確かに。
空想あるいは物語という水を養いにしなければ枯れ果ててしまう、しかもその水には毒が溶けていなくてはならない…「毒が、わたしたちの養分なのだ」というのもわたしの本質です。
「倒立する塔の殺人」で告発されたのは誰か…カロライナ・ジャスミンという花が気になりました。
Sまではいかなくとも、親密な女学生たちの様子も良かったです。皆川さんの作品の登場人物たちには逞しさも感じます。
三浦しをんさんの解説も良かったです。色々書いても、皆川さんの物語には結局「すごい」の一言を繰り返すのみです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2019年3月16日
読了日 : 2019年3月16日
本棚登録日 : 2018年11月8日

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