原子構造などのミクロな世界で成り立つ量子力学の法則。本書前半では、その成立の歴史や内容について数式を使わずに比較的分かりやすく説明してくれています。この辺を一読するだけならよく書けていると思う。
本書中盤ではさらに、量子力学の理論と観測結果がよく一致することは受け入れた上で、我々の巨視的なスケールでの直感に反する量子力学の解釈問題へと読者を誘ってくれます。この30年ぐらいの量子力学研究の最先端の状況を俯瞰できるでしょう。個人的には、理論をどう解釈したって、結果が一致しているならどうでもいいよ、と思っていたのですが、近年、理論の解釈の仕方によって結果が異なってくる実験が行われ、解釈が重要となっていて、それがノーベル賞受賞にも繋がっている。最近流行している「量子コンピュータ」の背景にも通じる量子力学の解釈の最先端には、SFなどで取り上げられる「多世界解釈」が真剣に議論されているようです。
本書終盤ではこの「多世界解釈」が科学的に何を意味しているのか、それ以外の解釈と何がどう違うのか、ということを何とか説明しようとしてくれています。でも、残念ながら門外漢にはさすがに簡単にその内容を理解できるようなものではなかったし、「多世界解釈」には無理があるんじゃないか、そう考えたところで現実の世界以外の他の世界が「干渉」してこないんじゃ証明できないわけで、考えて無駄じゃないのかなぁ、と思ってしまった。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
物理一般
- 感想投稿日 : 2023年8月23日
- 読了日 : 2023年5月15日
- 本棚登録日 : 2023年2月13日
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