日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)

著者 :
  • 筑摩書房 (2011年5月11日発売)
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日本に存在する(日本国として)領土問題。

色々な意味で知っていなかったことがこの本で歴史的事実と一緒に分かった。
日本固有の領土として主張する尖閣諸島も、日本古来の領土と言っているが1870年代以前に日本の領土であったことはないと言う事実。

北方領土も第2次世界大戦で放棄したが、アメリカがソ連と日本の国交回復を複雑にするため領土問題を曖昧にし、日本は北方領土返還を主張しソ連との良好な関係が構築出来なかったこと。
敗戦で領土を放棄し、その決着はポツダム宣言を日本が受諾したことにより決定したことであることを受け止めないといけない、それを国家は国民にちゃんと説明していない。

ドイツは敗戦により日本の比でない領土をソ連やフランスに没収されてしまったが、領土問題は棚上げして経済交流や国家交流を優先させおたがいに経済成長をして友好的な国家関係を構築した。
竹島についても同様にアメリカの地名委員会の地図には所属国を大韓民国とされている。

だからといって、この領土を日本の領土でないという結論を導き出しているわけではない。

聲高に領土問題を主張することはナショナリズムを利用しようという考えの人たちの戦略である。
それはどの国にも穏健派とそういった人たちが存在すると言うことであり、どういった方法がいいかはその時にどちらの人たちが権力に近いかによって違ってくる。
今の日本は前原氏のような強硬派がそれを煽っている。
先ほど述べた資料等によって、アメリカが日本の領土問題で紛争が起きた時日米安保によって日本を守るかどうかはこの本の事実を読む限りあり得ないと言う事になる。

だから戦後50年間の間棚上げという尖閣諸島近海の漁業協定や首脳会談で築かれた歴史がある。
違犯者はそれぞれの国の法律でそれぞれの国がその違犯者を取り締まるというルールだった。

それを先日の尖閣諸島の船長逮捕は違犯者を執拗に追いかけ、日本の法律で裁いてしまった。まさに棚上げでおたがいに暗黙のルールであった約束を日本が踏み込んだのだ。
中国の強硬派の人たちにとっては好都合なことである。
領土問題が解決しておらず棚上げになっていたことを違犯者はお互いに任せるのではなく時刻のルールで裁けるという事になれば、日本漁船を中国側のルールで裁けるという事にもなるからだ。
空軍・海軍など中国の軍事力が整備されアメリカとも肩を並べるほどになってきた中国の軍隊に、日本の保安庁の船だけではとてもではないが尖閣など守れない。

軍事力の無い国家にとって領土問題を解決するのは政治力と外交力、そして最後に頼るのは国際社会に向けての国際司法裁判所の活用である。

ただこれとて、日本に有利な結果が導き出せるとは限らないと言うことだ。

友好と共に教授出来る発展を外交力でおたがいに得るか、領土問題で徹底した抗戦をするかは政治を司る人間の判断によって分かれるだろうが、棚上げという曖昧な外交によってそれ以上の悪化や緊張を生まない手段を過去の指導者達がお互いのためにやってきたことを否定し、積み上げてきた今の均衡を大きくバランスを壊す必要はないと思った。

領土問題は難しい。それだけに一筋縄ではいかない問題だ。

日本が経済的に有利だった時代にソ連と中国との交渉で日本に僅かではあるが、有利な状況になっていたが経済状況が逆転しつつある現在、譲歩する利点も無くなりつつある。

その中で領土問題をおかしな方向に向かわせない方法はより一層の英知と努力のいることだと考えさせられた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 研究レポート・真実
感想投稿日 : 2011年11月12日
読了日 : 2012年5月23日
本棚登録日 : 2011年11月12日

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