好きって言えない彼女じゃダメですか? 帆影さんはライトノベルを合理的に読みすぎる (角川スニーカー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA (2018年6月1日発売)
3.00
  • (0)
  • (1)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 34
感想 : 3
4

タイトルからどのような内容なのか全く想像できなかった本作、いざ中身を開いてみればやっぱり相当風変わりな内容だった
ライトノベルを人類、生物、文化的側面から見つめ直し討論するってあまり見たこと無い方向性の作品

その風変わりな内容をただ風変わりなままで終わらせないのがこの作者の素晴らしいところ。
本作は主人公の妹、映が友人の内面を理解するためにライトノベルとはどのような魅力を持った存在なのかと知っていく話になっている。だから、オタク文化素人の映がライトノベルに関する素朴な質問をしたら井伊坂がオタク文化を知るものとして返答し、合理的に考える帆影が凄まじい解釈を披露して、天太が映に受け入れやすい形に変換する
本当に変わった内容だし一歩間違えれば居酒屋トークになりかねない会話ばかりなんだけど、トークの方向性がライトノベルへの理解でありそれぞれの役割が明確に分かれていることで会話の方向性がきちんと定まっている

そしてもう一つの主題である恋愛描写。天太と帆影が第一話の前から既に彼氏彼女の間柄になっているのは驚き。それでも帆影との仲が全く進んでいなかったのはライトノベル主人公らしい
表情変化が少なく言葉でも天太への好意をそれ程示さない帆影。けれど、天太は何となく帆影の心情変化は読めるし、そもそも帆影のすっとんきょんな考え方を好ましいと思い付き合い始めたのだから、当事者にとってはそれ程問題はないように見える
が、そこに凄まじいブラコンの映が関わってくることで面白くなってくるのだから堪らない。映は無自覚と言うか自分がブラコンであると必死に認めたがらないタイプなんだけど、「お兄ちゃんはあたしが面倒見るから!」なんて台詞はそこらの妹キャラじゃ言えない台詞ですよ

玩具堂先生お得意のヒロインの冴え渡るような心情描写は本作でも健在。特に手を握り合うシーンの描写はとても素晴らしかった
帆影は心情が判りにくいというキャラ付けがされ、映が何を考えているかは幕間の形でそれなりに示されていたから、読者は各所の描写から帆影の内面を読み取るよう形式になっているのか思っていたら……。ラストの滝の如く吐き出される帆影の好意には心底驚かされたよ。そうか、君もそういうタイプなのか

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ライトノベル
感想投稿日 : 2018年7月25日
読了日 : 2018年7月25日
本棚登録日 : 2018年6月2日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする