まほらば 3 (ガンガンWINGコミックス)

著者 :
  • スクウェア・エニックス (2002年7月1日発売)
3.50
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本棚登録 : 355
感想 : 7
5

第一巻の頃のようなお色気描写は鳴りを潜め、代わりに隆士の良い奴っぷりが前面に出てきたことで本作の良さがより強調されたように思える第3巻

隆士って巻き込まれ体質ではあるんだけど、巻き込まれることを不幸だと感じずにそこに暖かい想いを見いだせる人間。だから作中で恵が褒めるように、同じようにほんわかした梢だったり、複雑な思いで毎日を送っている朝美からは信頼される人間である
恵が語る所によれば、彼女も遠くに居て会えない彼氏に対してもやもやした感情は溜まっていて。だから隆士の裏のない温かみに溢れた態度には心惹かれる部分もあったのだろうけど、だからこそそんな隆士と居ても彼氏のことばかり思い出してしまう自分を知り、彼氏への想いを確かに出来たのだろうね
ここで自分を使って試されたと知っても、憤慨すること無くむしろ笑顔で感謝を伝えられる隆士って本当に良い奴だよなぁ

隆士の温かみある人間性は他の場面でも発揮されていて、それがこの巻で最も顕著なのは14話
梢が持つ人格の一つでありながら、鳴滝荘の誰とも会話しようとしないために誰も名前すら知らない「あの子」。今回登場したことで鳴滝荘の面々は「あの子」と会話するために試行錯誤するけど、次々と撃破されて別の遊びに夢中になってしまう。
これは既に何度も「あの子」との会話を試みて失敗してきたからというのもあるんだろうな。けれど、まだ会ったばかりの隆士はそうではない
せっかく出会えた相手だから仲良くしたいというのもあるだろうし、鳴滝荘の面々が真心から「あの子」と仲良くしたいと努力していると理解したから自分が何とかしたいと思う
隆士の行動が実を結んで「あの子」こと棗と会話できるようになったのは、本当に隆士の心の在り方に拠るものなんだろうなと思える。友達になってもきっとつまらないと臆病になる棗に対して真剣な言葉で本心を伝える隆士は格好良い
鳴滝荘の誰もが出来なかったことを成し遂げた隆士。いつの間にか鳴滝荘にとって無くてはならない人間になっていたことが判るかのようなエピソードだった

他に印象的な物語「ハル」も収録。短い話なんだけど、人と人の出会いの尊さを説くような話であり、とても記憶に残るような話

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: マンガ
感想投稿日 : 2018年11月1日
読了日 : 2018年11月1日
本棚登録日 : 2018年10月29日

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