上巻収録作では、一九二七年辺り以降の作品は、いよいよ作家としての才気が溢れているように思えて、味わいのある作品が多い。
そして何といっても「第七官界彷徨」。何より読んでいて楽しいし面白いし、その一方で絶えず何処かに淋しさやもの哀しさ、感傷的でノスタルジックな彩りを帯びてもいて、それは何だか純粋な結晶のようにも思えて、読み終わった心に不思議な感慨を残す。物語の中で小野町子は、第七官界に響く詩を書こうと願いながら叶わずにいるけれど、彼女が語る「第七官界彷徨」は、これを読んだ多くの人の心に響く作品であることには疑いない。とんでもないことであると思う。
読書状況:読み終わった
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尾崎翠関連
- 感想投稿日 : 2018年11月5日
- 読了日 : 2018年10月15日
- 本棚登録日 : 2018年11月5日
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