古本で購入。
「司馬遷は生き恥さらした男である」
という印象的な書き出しで本書は始まる。
匈奴討伐に失敗した李陵を庇ったことで武帝の逆鱗に触れ、宮刑に処された司馬遷。
彼の受けた屈辱と絶望、憤りと執念をもって書かれた『史記』。
著者は、司馬遷が『史記』において描いた世界構想を明らかにせんとする。
曰く、世界の歴史とは政治の歴史であり、『史記』の意味する政治とは「動かすもの」のことである。
「動かすもの」、つまり歴史・世界の動力となるもの、それが政治的人間であり、それこそが『史記』の主体をなす存在なのだと言う。
司馬遷は世界の中心となった政治的人間としての「個人」、すなわち帝王を描く「本紀」を書いた。
そしてその中心の周縁、あるいは新たな中心となる存在としての諸侯を「世家」で書くことで、世界が常に空間的に持続することを説く。
そして「列伝」において、英雄豪傑を始めとするあらゆる政治的人間を描いた。
著者の解き明かす『史記』の世界は(司馬遷の意図が真実そこにあるかは措いて)刺激的でおもしろい。
ただ全体的にどこかファナティックな、著者自身の執念のようなものが感じられる。
それを考えると、評伝とは言え確かに“文芸”作品なのだと思う。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2013年8月16日
- 読了日 : 2013年8月16日
- 本棚登録日 : 2013年8月16日
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