おもしろい。言葉のこと、国のこと、選挙や政治のこと、地域通貨のこと、本書ではこれからの社会に対していろいろな問題提起がなされている。ただ、題材に選ばれているのは、大正時代に書かれた三つの短編。その中で、菊池寛による「入れ札」がおもしろかった。無記名投票で代表者を選ぶとき自分の名前を書いて後ろめたさを感じている人物がいる。その人に票を入れたのは一人だけ。それは自分自身。後で、自分のことを最も信頼してくれていると思っていた後輩からこんなことを言われる。どうして皆あなたに投票しなかったのだろう。私一人しか票が入っていないなんて。しかし、その一票が、自分で入れたものと知っている本人は、その後輩に対して、うそつきやがってと腹は立つけど、何も言い出せない。どうしてこんな状況を思いついたのか。よく考えてみると、民主主義の中心になっているはずの選挙にもいろいろな問題がありそうだ。民主主義自体にも問題はあるけれど。しかし本書を読んでいると、柄谷さんは、よくまあこれだけ著名人をけなすことができるなあ・・・と思ってしまうのは私だけでしょうか。
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柄谷行人
- 感想投稿日 : 2015年4月20日
- 本棚登録日 : 2015年4月20日
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