宇治十帖のうち、最初の三帖が本巻に含まれている。宇治の景色の描写があるわけではないけれど、京から宇治へ向かう途中、木幡を通ったりするあたり、千年も前の風景が脳裏に浮かぶ。いまなら電車で20分ほどの距離、当時は馬に乗って移動したとして2時間ほどもかかったであろうか。なかなか毎日通うには少し気が重かったのかもしれない。けれど、好いた人のためならば、すぐにでもかけつけて行きたかったであろうか。匂宮が中の君とすんなり結ばれるのに対し、薫はいつまでもぐずぐずしている。そのうちに大君は衰弱して亡くなってしまうではないか。しかし、薫の気持ちがわからないでもない。無理矢理にということはどうしてもできなかったのであろう。それに比して、光源氏は何と多くの女性とすんなりと結ばれていたことか。ここでは、どちらかというと、どうして大君は受け入れてくれなかったのか、その方が不思議だ。妹のことがあったとしてもだ。父親を亡くしたあと、遺言に従って誠実に世話をしてくれる人に好意を抱かないわけがないと思うのだけれど。しかし、20代そこそこで、すうっと弱って死んでいくというのがどうにも想像できない。祈祷師がいくら祈ったところで救われることはなかっただろうし、なにか栄養のあるものをしっかり食べさせれば元気になったのではとも思える。うーん、何だかしっくりしない。
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カテゴリ:
源氏物語
- 感想投稿日 : 2016年2月18日
- 本棚登録日 : 2015年11月26日
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