とりかへばや、男と女 (新潮文庫 か 27-1)

著者 :
  • 新潮社 (1994年3月1日発売)
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感想 : 16

「とりかへばや」というと男と女が入れ替わった話ということしか知らなかった。男と女が入れ替わるといえば、大林宣彦監督の「転校生」。中学生?のころの小林聡美のふくらみかけた胸が強烈に印象に残っている。けれど、「とりかへばや」はそんな不思議な話ではなかった。不思議なのは一箇所だけ。男の姿をしていた姉君?が女性に戻るとき、一晩で髪が伸びたというところだけらしい。さて、臨床心理学者の河合先生がなぜこの物語を取り上げたのか、なんとなくは分かるけれど、結局はつかみ切れないまま読み終わった。しかし、本書を読むと、世の中には男が女の姿をしたり、女が男の姿をしたり、入れ替わったり、そういう話がいかに多いかが分かる。その中の一つ、女法王の話。もともと女が男の姿をし、学問を修め、最終的には認められて法王にまでなる。ところが何のかげんか女性性が出てしまい、妊娠。臨月まで誰にも気付かれず、祝祭ミサの司祭をしているとき、祭壇の前で倒れ出血、出産。ちょっとありえないとも思うけれど、現代でも人知れず、トイレで赤ん坊を産んで捨ててしまう人がいるくらいだから、あながち真っ赤なウソというわけでもないのかもしれない。モーツアルトのオペラ「コシファントゥッテ」にしても、別人になりすましてよくもばれないこと、これは物語のことだからか、などと思ってみるけれど、これまたよく考えると、他人になりすまして犯罪を犯すなんてことは現在でも起こっていることで、昔も今もその点変わらないのかもしれない。なにしろこの100年ほどで人間のまわりの環境は大きく変わったけれど、人間そのものは、脳も含めて、数万年前から大きく変わることはないのだろうから。だからこそ、昔話の中に、ヒトの無意識の世界を探るヒントがあるのだろう。ありがたや、図書館のリサイクル市で見つけました。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 河合隼雄
感想投稿日 : 2014年12月10日
本棚登録日 : 2014年12月10日

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