高地文明―「もう一つの四大文明」の発見 (中公新書 2647)

著者 :
  • 中央公論新社 (2021年6月21日発売)
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感想 : 18

おもろいなあ、気宇壮大やなあ。梅棹先生が「やれやれ」と言った姿が目に浮かぶ。本書を読みながら常に梅棹先生や梅原猛先生の本を読んでいるときと同じような感覚にとらわれていた。歴史が書き換えられるその現場に立ち会っている気がしたのだ。何の疑いもなく世界史を勉強し、40年以上四大文明を信じてきた。後に安田喜憲先生の著書で長江が加わり、インカとかマヤとかアステカとかも気になりながら、そのつながりなど全く分からないままできた。本書も当初、気になりながら即購入はせず、その後ふと立ち読みをして、梅棹先生が押しているということをあとがきで知って読み始めた。もうこれは大正解でした。まず、熱帯は暑いところという印象が一気に崩れた。2000,3000mと高地に上がれば気温が下がるのは当然なのに、そんなことに意識が回っていなかった。さらに、マラリアなどの疫病を媒介する蚊が高地にはいないという事実。なるほど、いったん高山病を乗り越えてしまえば、非常に住みやすいのだ。そして食料になる植物の栽培。アンデスのチューニョ、エチオピアのエンセーテなどは一度味わってみたい。大河がなくても文明は起こる。十分な食糧が確保できて、人が集まれば。各高地での平行進化という発想は梅棹先生を引き継がれているのだろうなあと思いながら読んだ。もう80歳に近い著者が、メソポタミアやインダス、黄河に長江と自分の目で確かめたいとおっしゃっているのには頭が下がる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文化人類学
感想投稿日 : 2021年8月6日
読了日 : 2021年8月6日
本棚登録日 : 2021年6月27日

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