教養を身につけたくて新書を読んでいるというわけではないのだが、できれば教養ある人間でいたいとは思う。教養とはいったい何か。本書の中で、いくつものテーマで語られている。まあとにかく、矢継ぎ早に余談が登場するので、本筋がどこにあるのかを見失いそうになる。これは、私が学生時代に聴いた集中講義でも同じだった。今でも覚えているエピソードは、現代では外科医と言えば医者の花形であるが、中世(たぶん近世も。このあたり教養がないゆえの自信のなさ)外科手術のような刃物を扱う作業は床屋などが行っていた。そのためか、現在、理髪店の前で回っている赤青白のヤツ(サインポールというらしい)の3色は動脈・静脈・体液を意味しているとのこと。また、サイエンティストということばは19世紀に入ってからできたのだが、当初istと呼ばれることを嫌った自然哲学者が多かったようだ。ianなら許せるのだとか。その辺の意味の違いは教養のあるなしに入るだろうか。ただし、本書では、「知識がある」=「教養がある」とは考えられていない。慎み深いとか、ディーセンシー(decency)ということばが使われている。あるいは、「人間が仲間内で静穏に生きていくために弁えておくべき行動習慣(規矩という)を実践できること」と書かれている。なかなか難しい。具体例として、言葉の問題が上がっているが、私も「ら抜き言葉」などを使わないように気をつけているがあやしい限りである。肯定的な意味での「やばい」はできれば使いたくない。パソコンはなんとか許してほしい。まあできるだけPCと書くようにするか。「ライン」はもうどうしようもない。cultureが耕すから来ているということは知っていたが、その派生語であるcultivateについては気付いていなかった。花園高校にそういうコースができているのにもかかわらず。これもまた教養のなさか。いや、単に知識がないだけか。いやいや、知らないことばがあったのに調べようとしない姿勢が教養のなさか。村上先生ご自身、大変厳しい規矩をお持ちのようだが、どうやらそれはお父様から受け継がれているようだ。そういう様子が本書の中で垣間見える。(規矩ということばの使い方は正しいのだろうか。)
- 感想投稿日 : 2022年2月17日
- 読了日 : 2022年2月17日
- 本棚登録日 : 2022年2月10日
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